第11話

私は、アルバムを鞄にしまい込む為に、中を整理する事にした。


すると、鞄の一番奥の方から父親に託された家宝が出てきた。


毎日、アクションの練習でヘトヘトになっていたので、その存在すら忘れていた。


大袈裟に家宝と言っても手紙サイズの薄い木箱なのである。


託された時は、その時の精神状態も影響してか全く興味が湧かなかったのだが、今となっては何か気になって仕方がない。


私は、おもむろに木箱を開けた!


中から綺麗に均等に折り畳まれた、少し高価な和紙が出てきた。


広げて見るとーーーー。


何やら日本地図のような絵が描かれており、所々に神社の鳥居のマークが七つあった。


「なんじゃこりゃ? これが家宝?」


何か文字と絵が書かれているのを見つけた!


“これを七つ集めよ”


「意味が分からない…………」


謎解きの要素があるのか?


何か試されているのか?


色々勘繰ってしまう。


面白い! 私なりに家宝の謎解きに挑戦してやろうではないか!


何か分からないものに、掻き立てられる私であった。


うーん、これはどう見ても日本地図だ。


そして、これもどう見ても神社の鳥居だ。


待てよ、これはもしかして…………。


やっぱりそうか!


全国に存在する神社の位置だな!


おぉぉ! 偶然にも今いるこの原始時代村の位置辺りに鳥居のマークがあるぞ!


この辺りと言えばーーーー。


毎日、十キロマラソンで走っている神社ではないのか。


こうしてはいられない。


早速、神社に向かう事にした。


結局、練習以外で神社まで走る事になるとは…………。


私は着くなり、神社の巫女さんを訪ねた。


「すいません、少しお尋ねしたいのですが」


「はい、何用でしょうか?」


「これって売って貰えるのですか?」


「私では、分かりませんので少々お待ち下さい」


「はい、宜しくお願いします」


巫女さんは、にっこり微笑んで神社の境内の奥の方に入って行った。


「お待たせしました」


そう言って現れたのが、神主さんでした。


「あなたですか? これを売って欲しいと言うのは?」


「はっはい」


「これは数十年前に、ある方に頼まれて特別に作ったものなのです」


「えっ…………」


「そして、その方がもう必要ないからと返納されたものなのです」


「それを売って貰えませんか」


「正直、値段は高いですが宜しいですか?」


「はいっ! お願いします!」


「分かりました…………」


「ありがとうございます!」


「では、これで」


(ほっ………… 本当かよ?)


調子に乗って返事はしたものの、目玉が飛び出る位の値段だった。


「どうしましたか?」


「いや今日は、生憎持ち合わせがないので、お金が用意出来たら改めて伺ってもいいですか?」


「はい、お待ちしております」


神主は深々と頭を下げてそう言った。


「しっ失礼します!」


私は逃げるように走って帰った。


多分、幾度となく走った十キロマラソンの中で新記録が出る位の速さだった事は間違いないだろう。

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