第10話
ある休みの日に、数人の仲間達と一緒に私の部屋で遊んでいた。
たわいもない話や馬鹿馬鹿しい話や恋愛話をしているのが、日頃のストレス発散にもなり楽しくてしょうがなかった。
そして、昔話に花が咲き学生時代、陸上部で国体に出場した経験のある者が私に話をふってきた。
「大地君の昔の写真とかないの?」
「あるよ」
家を失ってから、全ての荷物を鞄に詰め込んで持ってきているので、当然昔のアルバムもある。
「はい、これ」
私は、鞄からアルバムを取り出して見せた。
幼少の頃から、つい最近の写真まである。
「面影あるね、何歳の時?」
「二歳か三歳だと思うよ」
幼少の頃の写真を見て盛り上がる仲間達。
ページを捲る度に段々と最近の写真に近づいてきた。
スポーツトレーナー時代に突入した時、突然ネズミにそっくりな顔をした者がーーーー。
「ハロウィーンだよね」
そう小声で言った。
(何故知っているのだ? まだページを捲っていないのに!)
(確かに次のページは、ハロウィーンで扮装している写真なのだが…………)
色々考えた結果、スルーをする事にした。
せっかく仲良くなった仲間との関係が、拗れるのを危惧しての判断なのだ…………。
トントントン!
ドアをノックする音がした。
「入っていいよ」
私は、部屋の中に招いた。
「俺のチョコレート知らない?」
そう言いながら、カラフルなジャージを着た者が入ってきた。
「チョコレートがどうしたの?」
私が問いかけるとーーーー。
「盗まれたんだよ! 彼女から送られてきたバレンタインのチョコ」
「部屋の机の上に置いていたのに、ないんだよ!」
「よく探したのかよ?」
ナルシストな者が問いかけた。
「一緒に送られてきたマフラーと入れ物はあるんだけど、チョコだけないんだよ!」
「しかも、彼女の手作りチョコレートなんだよ!」
私は、直感でネズミにそっくりな顔をした者の顔を見たが目をそらされた。
「これは、一大事だ! 皆で探そう!」
頭の大きい背の低い者が、立ち上がり仲間達に協力を要請した。
そして、仲間達と手分けをして探す事になった。
ロービーから食堂、娯楽室と屋上、大浴場まで探したが見つからなかった。
頭の大きい背の低い者は、一部屋ずつノックして聞き回っていたが…………。
仲間達とロービーで項垂れていたらーーーー。
「皆揃ってどうしたの?」
管理人さんが近寄ってきた。
事の経緯を全て管理人さんに話した。
「あぁ、それなら犯人はあなたね」
そう言ってネズミにそっくりな顔をした者を指した。
理由は、寮のルールにあった。
私達は、部屋のゴミ箱が一杯になったら、ドアの外に出して置いておくのです。
それを管理人さんが、集めてゴミの分別と仕分けをしてから捨てる仕組みになっている。
その為、誰がどのようなゴミを出しているのかを管理人さんは把握していたのでした。
「普段は、仕事の一環だから特別に変なゴミ以外は気にならないのだけどね」
「やけにカラフルな包装紙が見えたので、気になって仕分けしてたのよ」
「そしたら、中から食べかけのチョコレートと破られたラブレターらしきものが入っていたの」
「ラブレターもかよ!」
カラフルなジャージを着た者が、ネズミにそっくりな顔をした者を睨み付けた!
管理人さんが、話しを続けた。
「てっきり彼女からのプレゼントかな位にしか、気に止めなかったのだけど」
「隅に置けない奴だなぁと思って、部屋番号は覚えていたのよ」
後に当事者二人で話し合いが持たれる事になり、事の結末は知る由もなかった。
この件以来、当たり前の事だけど部屋を出る時は皆、鍵を閉めるようになったのは言うまでもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます