第7話
柔軟体操が終わってから、日が暮れるまでアクションの練習が行われた。
身体は限界を超え足が棒のようになり、立っているだけでも辛かった。
こんな状態で組み手が出来るのか…………。
聞くところによると、リーダーはフルコンタクト空手の有段者。
あの喧嘩空手と異名をとる実戦空手で有名な空手道場の出身らしい。
寸止め空手をかじった程度で勝てるはずがない。
下手をすれば大怪我をするかもしれない。
絶対に勝てないと頭では分かっているが、負けたくないし負ける訳にもいかない。
漢として!
負けたら、この先ずっと舐められるだろうし。
技術で敵わないのは百も承知だ。
しかし、私にはウエイトトレーニングで鍛えた筋肉とパワーがある。
体重も十キロ以上、私の方が重い。
格闘技において体重が重い方が有利だからこそ、階級に分けられているのだから。
ここは短期決戦で、一か八かの勝負に出るしかない。
うじうじ考えていても仕方がない、やってやる。
腹は決まった!
私は、寮に戻ってシャワーを浴びて、栄養ドリンクを二本飲んでから食堂に向かった。
「おう! 大地君、遅かったね」
リーダーが、余裕綽々の表情で待ち構えていた。
しかも、空手着姿で黒帯を締めている。
噂を聞き付けたのか仲間達のギャラリーが、食堂の周りを取り囲むように埋め尽くしていた。
審判をする者も決まっていた。
もしかして、これって洗礼?
新人は、必ずリーダーにシメられるのだろうか。
そして、負ければパシリにされて…………。
それだけは勘弁だ。
尚更、負ける訳にはいかないし嫌だ!
せっかく住む所を確保出来たばかりなのに。
住む所があっても惨めで嫌な生活は続けられない。
負けたら、ジムに戻ろう…………。
こうして、空手対カマキリ拳法の異種格闘技戦が幕を開けた!
「大地、準備は良いか?」
審判が仕切ってきた。
「いつでも良いよ」
ここまで来たら引き下がれないし、腹は決まっていたので、私は間髪いれずに即答した。
「リーダーも準備は良いですか?」
審判が聞いた瞬間ーーーー。
「当たり前だろ! 早くしろ!」
リーダーの上段廻し蹴りが炸裂した。
「うぎゃあぁ!」
審判は、その場に倒れ込んだ。
「よーい! 始め!」
すかさず、代わりの審判の者が現れ合図を出した。
その瞬間ーーーー。
私は、リーダーの懐に飛び込んだ。
ありったけの力を込めて渾身の拳をボディーに叩き込んだ。
「うっ!」
一瞬、リーダーの顔が歪んだ。
(いけるかも)
畳み込むようにラッシュをかけたらーーーー。
審判が、静止の合図をしながら割り込んできた!!!
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