第6話

原始時代村から五キロ先にある神社の鳥居をくぐり、お参りをして戻ってくる。


往復十キロのマラソンが、毎日行われているのだ。


しかも、これがウォーミングアップ。


もしかして、究極の肉体労働の仕事に就職してしまったのかもしれない…………。


早くも不安が頭をよぎった。


普段、走り慣れていないので途中、横腹が痛くなったり、呼吸が苦しくなったり、足がつりそうになったりした。


何回も挫折をしそうになったが、どうにかこうにか気合いで乗りきった。


「よーし! 皆、戻ってきたな!」


「それでは、腕立て伏せ百回!」


休む間もなく、アクション講師の筋トレ地獄が始まった。


「はっはい!」


皆、歯をくいしばって返事をしていた。


「次は、腹筋百回!」


「はい!」


「続いて背筋百回!」


「はい!」


「ラストは、スクワット三百回!」


アクション講師の容赦のない筋トレ指導が続く。


「はっはい!」


ここまでくると、こなせる者とこなせない者の差が、はっきり出てくる。


女性陣は、数人しかこなせていない。


それでも、泣きながら頑張っている者もいる。


筋トレだけなら誰にも負けない自信がある私だが、十キロ走った後では話は別だ。


しかし、スポーツトレーナーと言う筋肉を売りにする仕事を生業としていた私にはプライドがあった。


バテバテの身体に鞭を打って、必死になって食らいついた。


最後のスクワットの時は、流石にやばかったが…………。


「終わった者から、二人一組になって柔軟体操!」


「はい!」


やっと、一息つけると思ったらーーーー。


「痛い痛い痛い! 痛い!」


仲間達の叫び声が、あちらこちらで響き渡る。


座った状態で、目一杯足を両側に広げて身体を前に倒す“股割り”と言う柔軟。


二人一組の為、もう一人が背中の上に覆い被さり、おでこが床に付くまで体重をかけて押してくるのだった。


「大地君だっけ、僕はまとめ役のリーダー、宜しく!」


「あぁ宜しく!」


私の柔軟体操のペアの仲間が、話しかけてきた。


「じゃあ、大地君の方から“股割り”やろうか」


「うっうん」


「大地君、柔らかいね」


「中学生の頃、器械体操部だったから」


「どおりで、あとカマキリ拳法の使い手なんだってね」


「えっえっ?」


どこでどうオーディションの時の情報が、漏れたのかは知らないけど。


しかも、使い手になっているし…………。


「僕は、空手やっていたから組み手やろうよ」


「組み手?」


「よし! 決まりね! 寮に帰ったら食堂で待ち合わせをしよう!」


断る余地もなく、強引に約束させられた時ーーーー。


「おいリーダー! ちょっとこっち手伝ってくれ!」


「はい!」


アクション講師に呼ばれて行ってしまった。


かなりやばい事になってしまった。


どうしよう…………。

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