第2話
数日後、オーディションに来て下さいと連絡が来た!
私は、ジムのオーナーに法事があると嘘をついて休みを貰った。
まぁ、ズル休みをする時の常套手段だからオーナーは気づいていたかもしれないが、詳しくは追求されなかったので助かった。
そして、オーディションの日を迎えた。
地図を頼りにオーディション会場を探した。
駅から割りと近くにある綺麗なガラス張りの大きなビルに到着した。
「ここかぁ…………」
期待と不安と緊張が込み上げてきた。
オーディションの方は、コチラにと書かれた案内板が、矢印と共に控え室まで導いてくれた。
「すみません! オーディションにきたのですが!」
私は、そう叫んだ。
奥から担当者らしき方が、出てきて話しかけてきた。
「お名前は?」
「大地直樹です」
オーディションを受ける人の一覧表らしき紙に、私の名前がチェックされた。
「順番にお呼びしますので、コチラに目を通してお待ち下さい」
一枚の紙が手渡たされた。
紙にはこう書かれていた。
刑事「動くな! 動くと撃つぞ!」
犯人「うるせえ! 捕まってたまるか!」
(なんだこれは?)
と思うやいなや。
「大地さん、お入り下さい」
奥の部屋から呼ばれた。
私は、ドアをノックして恐る恐る部屋の中に入った。
「失礼します!」
すると、高級そうなスーツを着た方達が、一斉にギロッと私の方を見た。
(何だ? この異様な雰囲気と感じ?)
そこには、物凄い緊張感が張り巡った空間が醸し出されていた。
「こちらに来て下さい」
進行役の方が、床にガムテープが貼られている位置まで私を招いた。
正面に三脚で固定されたビデオカメラが、モニター画面に私を写し出していた。
相変わらず、ギロッと見られた状態は続いていた。
蛇に睨まれた蛙の気持ちが少し分かる気がした。
「では、自己紹介をお願いします」
進行役の方が、指示を出してきた。
「大地直樹です! 二十歳です!」
私は、わざとらしい位大きな声でハキハキと言い放った。
「では、特技などあれば披露して下さい」
「特技?」
最近の度重なる不幸が訪れるまでは、平々凡々な人生を送ってきた私にとってそんなものはない。
どうすれば良いのやら…………。
しかし、ここでつまづく訳にはいかない! 住む所を確保するまでは。
(えーい! どうにでもなれ! でも、どうにかしてやる!)
私は、開き直った。
そして、勢いと閃きに任せる事にした。
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