第30話 魔界の正体
「お父様大丈夫でしょうか?」
「バブ……」
フィールちゃんに色々聞いて次の日。
更に色々調べようと、グラフを魔界に戻してみて半日が経った。丸一日経ったら出してあげる話になっていて、フィールちゃんが階段に座りながら心配で僕を抱きかかえる。
本当に彼女は優しいな。あんなグラフを心配するんだから。
「フィールちゃん。レグルスエイドに手紙を出していたの。私達と一緒に戻る時にお母様と会えるかもしれないわ」
エミが手紙を広げて声をあげる。どうやら、フィールちゃんのお母さんと連絡を取ったみたいだ。
「それにしても驚いたわ。フィールちゃんのお母さまは王族みたいよ」
「バブ!」
エミの言葉に驚いたけど、宮廷魔術師のグラフの相手なら妥当なのかな。
「お母さまに会える……」
フィールちゃんは感慨深げに呟く。胸を抑えて涙が頬を流れてる。彼女の生い立ちもグラフから聞いた。彼も過去の行いを後悔している様子だった。
『フィールにはもっといい環境を整えてやればよかった』って申し訳なさそうに後悔していたな。もっと早くそう思ってくれてれば結果は違うものだったのにな。
「バブ!」
そろそろ時間だ。僕はグラフを召喚する。
黒い空間から彼が現れる。手に何か持ってる、もしかしてあれは……。
「アキラ様! やりました! 蝋燭に触れながら召喚されたら蝋燭を手に持っています!」
グラフは大喜びで声をあげる。
割と簡単に手に入れられたな。
彼は長机に座ると話始める。
「赤、青、黄色、茶色が2本の5本でした。そして、これが青の蝋燭……。教会の教えか」
「お父様、教会の教えって?」
「ああ、この世界は五つの属性でできているという教えだ」
五つの属性? そういえば、中国拳法の映画でそんな話をしていたような気がする。
「火、水、土、木、金の五つ。火が土を作り、水が木を作る。土と木が死ぬと金になり、金が火と水を作る。そして、長い月日が経ち、それぞれが循環し、今の世界が出来上がった」
グラフはそう言って水色の蝋燭を見つめる。世界の成り立ちか、でも、なんで黒い世界に?
「……黒い世界は私の中なのかもしれませんね」
「バブ……」
グラフの声に意気消沈。僕も考えた、あの世界は僕の精神世界だったんじゃないかってね。
五つの属性は全ての源、僕の中の五つの属性だったんだ。
世界も僕も同じものでできてるってことだよね。だから、精神世界にそれが生まれてる……。
「気を落とさないでくださいアキラ様。とりあえず、この蝋燭に火をつけてみましょう」
グラフは僕を慰めると水の蝋燭に火をつける。火をかざしてるけど、一向に火が付かない。
「おかしいですね。……もしや水?」
水の蝋燭に火をつけるには水か。確かにそうかもしれない。水をコップ一杯、厨房から入れてくると長机に置くグラフ。
僕を見つめてから頷くと水の蝋燭に水をかける。
「キャ!?」
「うわ!?」
「バブ!?」
蝋燭に水をかけると噴水のように蝋燭から水が上がる。とめどなく上がる水柱、僕らは驚いて声をあげてしまう。
「きゃ! ちょ、ちょっとグラフさん! そういう遊びは外でやってください!」
「あ、すみませんエミ様。アキラ様、外に行きましょう」
厨房から出てきて驚くエミに追い出されてしまった。その間もずっと水が出てる。
ウルドを出して掃除をさせておこう。プラナは大きすぎて掃除なんて細かい作業はしにくいから無理だろう。
「な、何で我が」
ウルドは愚痴をこぼしながらも雑巾で水をかき出してくれる。庭に水柱が虹を作ってる。今もまだ水柱は上がりっぱなしだ。
「いつまで水が生まれるのでしょうか……。うっ、体が……」
「お、お父様!」
水柱を見て声をあげていたグラフ。急に頭を抱えだして膝を落とす。フィールちゃんが心配して駆け寄る。
もしかして、この水柱はグラフのMPを使ってるのか? それなら早く止めないと魔力切れを起こして倒れちゃうぞ。死にはしないけど、後遺症を残すこともあるっていうから。
「バブ……」
とはいうもののどうやって。水……凍らせれば止まるか。僕は軽い気持ちで氷属性の球を水柱に当てる。流水をも凍らせていく僕の魔法の球、惚れ惚れするな。
「と、止まった……。ありがとうございますアキラ様。フィールもありがとう」
「ううん。よかった、お父様が無事で」
水の動きが止まってグラフが落ち着いた様子で立ち上がる。フィールちゃんはその間、あの光で回復させ続けてた。彼女がいなかったらすでに倒れていたかもな。
でも、これでわかった。あの世界は精神世界なんだ。だから取り出すことも利用することもできるんだ。
ってことはまた振り出しか……。どうしたものか。
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