第23話 観光②
「ん~、美味い!」
「ほんと美味しいわね!」
「バブバブ!」
さらに次の日。市場ではなく、レストランに入って昼食を頂いてる。二人と一緒に感嘆の声をあげる。
大きなお肉のステーキになんとバターの昼食。エミは白いパンにバターを塗って砂糖をまぶして食べてる。砂糖とバターが普通に存在してる国……末恐ろしい。これで白米があったら最高なんだけどな~。
「おや? 奇遇ですね。昨日に続いて」
食事を楽しんでいるとグラフさんがフィールちゃんと一緒に入ってくる。隣の席に座ると小さく彼女がお辞儀をして挨拶してくる。
「流石はレッグスさんですね。ここは私もお気に入りのレストランなんです。異世界人が作った食材を使ったお店でお値段もお手頃。最高なんですよね~」
グラフはそう言って涎を拭う。本当に好きなんだろうな。
「それじゃフィールちゃんも好きなのね」
「え……。私は始めてくるから」
エミがフィールちゃんに聞くと彼女は浮かない表情で答える。グラフさんは一人で食事にきていたってこと? 男で一つで育ててるのに一人で食事? なんだかおかしいな。優しそうに見えるけど。
「ははは、フィールはお肉が嫌いだから一緒には来ていなかったね。今日は我慢してくれるかな?」
「は、はい。お父様」
グラフさんの声にフィールちゃんが少し怯えて答える。その様子にレッグスとエミが顔を見合って首を傾げた。
「おっと、そんな事よりも。レッグスさん、ブラックゴーレムを倒したんですよね。その時の話を聞かせてください」
グラフさんが急に話を変えてレッグスに質問する。レッグスは僕とウルドとプラナのことを隠して話をする。ただただ剣で片付けたという話を誇張して話してる。なれたものだ。
「なるほどなるほど。マナを剣に纏わせることが出来るのですね。それならばブラックゴーレムの黒檀の体も切れますね」
話を聞いて納得するグラフさん。ウィドもマナを纏うとか言ってたな。それでブラックゴーレムを倒せるなら世話はないと思うけどな。
「ふう、相変わらず美味かった……。フィールも食べ終わったか?」
「はい。美味しかった」
「では、お先に失礼しよう。ではレッグスさん、今度はパーティーで」
グラフさんは食事を終えるとすぐにフィールちゃんと一緒に席を立つ。僕らも食事を終えると席を立ってお店を後にした。
「はぁ~、明日も来たいな」
「ふふ、明日はもっと美味しいものを食べられるかもよ。パーティーだもの」
レストランから出て感嘆の声をもらすレッグス。エミの言う通り明日は招待されたパーティー。もっと美味しいものが出るはずだ。考えるだけで涎が出ちゃう。
って! この国に来た理由を忘れてた! 召喚について調べるために来たんだ! あのゴーレム達が自然発生じゃないっていうのは合ってるはず。宮廷魔術師のグラフさんが召喚したはず……ちゃんと調べないと!
フィールちゃんからもらった本は何の変哲もない初心者の魔法の本だった。【コボルトでもわかる魔法書】、ゴブリンじゃないだけのものだ。著者は別だった。
「ひったくりだ! 誰か捕まえてくれ!」
「キキ!」
レストランから出て次にどこ行こうかと周りを見ていると声が聞こえてくる。
声の方を見ると猿のような魔物が屋台から商品を盗んでいる。
猿だけに身軽、猿らしい声をあげながら家の屋根の上へと昇ってしまう。あれを捕得られるのはウルドくらいか?
「キキキキ~」
猿の魔物は屋台の店主を嘲笑うかのように笑い声をあげ、盗んだリンゴのような果物を口に入れる。
シャリシャリと子気味いい音を立てるので店主は悔しそうに拳を握ってる。
何とかしてあげたいな。そう思っていたらレッグスが飛び出してた。
「キ~!?」
「逃がさないぞ!」
屋根まで跳躍して見せるレッグス。土魔法で跳躍したみたいでさっきまでいた地面が少し盛り上がってる。猿の首根っこを掴んでみせる。思ったよりも逃げなかった?
すると猿の魔物が黒い空間に消えていく。召喚された魔物だったのか。
「ありがとう。あんた凄いな」
「いや、もっと早く動くべきだった。お代は俺が払うよ」
「はは、ありがたい。だけど、受け取れないよ。気持ちだけもらうさ」
屋台の店主の元に降りるレッグス。店主のおじさんがお礼を言ってくれる。この町の人はいい人が多いな。
「……なるほどな。俺を観察しているんだな」
レッグスはそう言って僕らの元に帰ってくる。盛り上がった地面を土魔法で直して、再度周りを見回す。
レッグスの言う通りみたいだ。数人の人と目が合う。彼がどれほどの能力を有しているかを見定めてるんだ。
「ウルドとプラナのことも見られていたはずだが、できるだけ出すのは控えた方がいいかもな」
小さな声でレッグスが話す。
パーティーで何か仕掛けてくるかもしれないな。色々と楽しみだな。
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