第24話 暴走
◇
「お父様……本当にやるの?」
私はフィール。お父様がパーティーに読んだ人たちにひどいことをしようとしてる。
私はやりたくない、あの子もとてもかわいかった。
「何のために呼んだと思ってるんだ? レッグスを亡き者にすればレグルスエイドを手に入れることが出来る。そうすれば、オーランスはエレービアを崩していけるのだ」
お父様の書斎に声が響く。お父様は狂ってる。オーランスのためならなんでもやってしまうんだ。たとえ相手があんな赤ん坊でも……。
「レッグスの実力はわかった。フィール、お前なら勝てる。その【無属性】の魔法を使えば、一瞬で勝負がつく」
「お父様……それは」
私にレッグスさんを殺せと言ってる? いや、私はやっとお父様に認めてもらえる力を手に入れられた。それだけでよかった。
やっと手に入れた力で人を殺すなんて、あんな優しい人たちを傷つけるなんて、嫌。
「私やらない!」
私は勇気を出した。その言葉を聞いたお父様は前の、とても怖いお父様になっていく。
「フィール。何を言っているのかわかっているのか? ふぅ、もう一度聞こう。お前がレッグスを屠るんだ。そうすれば」
「やらない! 人を傷つけることはやりたくない!」
お父様の声を遮って声をあげる。お父様は眉間に皺を寄せて拳を握って近づいてくる。怖い!
「いや!」
ゴンッ! 私の白い結界がお父様の拳を阻む。拳から血が流れてる。綺麗な真っ赤な血が床まで続く結界を伝う。
「この力を攻撃に応用するんだ。私を最初に阻んだ力を使ってみなさい。あの塔を壊した力を」
「いや! お父様を、人を傷つけることはしたくない」
「もうしているだろう。この血を見ろ。お前のせいで傷ついた拳だ」
お父様が結界越しに傷ついた拳を見せつけてくる。血で滲んでいて赤い肉が見える。お父様はどんどん傷ついていく。包帯を付けた腕もまだ治っていないのに……。
私のせい、私が力を手に入れたから……。私が力を手に入れちゃダメだったんだ。
「お父様」
「ん? わかってくれたかフィール? よかった」
結界を解くとお父様が抱きしめてくれる。とても暖かくてホッとする。
お母さまに抱きしめてもらってから誰にもしてもらえていなかったこと……。涙が流れてくる。私はこれが欲しかったんだ。
「ごめんなさいお父様。私が力を手に入れてしまったから、お父様は変になっちゃったんだよね。ほんとにごめんなさい。親不孝な娘だったね」
「フィール? それはなんだ?」
「え?」
涙を流して謝る。私は私の力で終わらせる。そう思っていたらお父様が私の背後を指さして聞いてきた。
私は指さされる方向を見ると唖然とする。
「「天使?」」
私と一緒にお父様も声をあげる。
私の背中から白い羽が生えてる。私が天使? 私の力は天使の力?
「勝てる! フィールならどんな敵が来ても勝てる! レッグスなど敵にならん! は~っはっはっはっはっは!」
「お父様……」
お父様は狂ったように笑い声をあげる。
でもお父様が思っているような未来はこない。だって私はこの力で終わりをむかえるんだもん。ごめんねお父様……お母さまに最後くらい会いたかったな。
私は自分の首に手をかざす。そして、力を込める。
「死ぬつもりだったか! そうはさせん!」
「きゃ!?」
腕を掴まれて首から離される。お父様は手に持っていた魔石を私の胸に突き刺す。
「知っていたか? 人を魔石化する方法を? フィール、お前に使うことになるとは思わなかったがな」
「お、お父様……やめて、死なせて」
「死なせるわけがないだろ。お前の母親のような無残な死は絶対にやらん!」
「え!?」
お父様の声を痛む胸を抑えながら聞く。
お母さまが死んでる? そんなわけないお母さまは自分の国に帰ったんだ。生きてるに決まってる!
「嘘! お母さまは生きてる」
「ん? ああ、言っていなかったか。お前が無能とわかった時に殺してしまったんだ。お前などいらんとな! あの女はエレービアの女だった。生かしておく意味もなかった」
「あ、あぁ……。そんな……」
私の言葉を全否定してくるお父様。
絶望、私の心が支配される。魔石に私のマナが吸い取られるのを感じる。
私の体が魔物になっていく? 暗い、視界が暗くなっていく、お母さま……お父様。
「ははは、これで私は【天使】を従魔にしてやった! この世は俺の者だ! 誰もネタフもこれで俺に従うことになる! おっと、まだ焦る時ではないな。まずはエレービアを俺のものにしてからだ。外からの国盗りは大仕事だからな。ネタフにやってもらわなくては。ふははは笑いが止まらん! ははははは」
魔石になった私。それを喜ぶお父様……私は死を選ぶこともできない、正しいことをすることも許されない【従魔】にされてしまったから。
お父様は自分の従魔達を取り込んでいく。お父様も魔物になってしまったんだ……。私は何もできなかった。
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