第16話 エレービア圧勝
「がはは、本当にありがとうレッグス殿!」
ゴーレム達を倒して次の日。領主様のレグルス様の屋敷に呼ばれて祝勝会。貴族の服まで用意してくれて、着飾っているレッグス。僕も綺麗な服を着せてもらってる。
「しかし、レッグス殿は凄い。剣の腕も一流で召喚もできるなんて。今までは能ある鷹は爪を隠すといったところだったのだろう?」
「は、はは。そんなようなものです……」
レグルス様の問いかけに複雑な表情で答えるレッグス。僕の手柄を取ってしまっているようで嫌なんだろうな。でも、僕みたいな赤ん坊が召喚をしたなんて知られたら色々と危険だ。色んな組織から狙われてしまう。人さらいも普通にいる世界だからね。まあ、倒してしまえばいいとは思うけど。
「オーランスのことを考えると笑いが止まらんよ。あの丘の上で戦場を見て顔を青くさせたのだろう。なんせ、ブラックゴーレムを赤子の手をひねるように倒してしまう従魔を使役しているのだから! ガハハ!」
レグルス様はそう言って大笑い。オーランスの軍隊は勝ちを確信して姿を現した。それなのに撤退をしたんだから笑いが止まらなくなるのも無理はない。顔を真っ赤にしている姿が僕でもでも想像できる。
「今頃、ゴーレムを召喚した召喚士達のせいにしているのだろうな。馬鹿なオーランス王のことだからな! ガハハ」
更に笑いが止まらない様子のレグルス様。周りの貴族の人達もニッコリと微笑んでる。兵士も何人か招待されているんだけど、その人たちも満面の笑みだ。
「ではレッグス殿。改めて今回の救援本当にありがとう。レグルスエイドの民を代表してお礼申し上げる。そして、そなたには準子爵の位を授ける」
「ええ!? 爵位ですか?」
レグルス様はニッコリと微笑んで爵位を証明する証明書を手渡してくる。レッグスは驚きながらも受け取ると跪く。
跪くレッグスの肩に手を置くレグルス様。レグルス様は煌びやかな剣を彼に手渡す。
「我が王国、【エレービア】は頼もしい勇者を得た。喜ばしい事だ。この剣はエレービアお抱えのドワーフが精錬した【ドワーフメタル】で作られたものだ。ブラックゴーレムは流石に傷つける程度のものだが、ミスリルよりかは強いものだ。使ってくれ」
「はっ! ありがたく頂戴いたします」
レグルス様の声に答えるレッグス。周りも拍手をする音だけが聞こえてくる。
「ははは、このような勇者の息子。未来が楽しみじゃな」
「あ、はい。それはもうすごく楽しみですよ」
レグルス様は僕を優しく見つめて話すとレッグスが苦笑いで答える。既に凄い事になっていたりするから複雑なんだろうな~。
それから祝勝会は夜まで続いた。次の日の朝になると頭を抑えるレッグスが出来上がっていた。
「うあ~、頭いてぇ~」
美味しい美味しいとワインをがぶ飲みしていたレッグス。そりゃ二日酔いになるよ。すぐに帰えると思ったら祝勝会なんかに参加しちゃって。お姫様みたいな、かわい子にも声を掛けられて浮かれるんだからどうしようもない。これも因果応報というやつだろう。
僕はもっとゴーレムの魔石が欲しかったんだけど、魔石のほとんどは町の復興に使われる事になった。祝勝会の費用もそこからきてる。
僕がもらえたのはウルドとプラナの強化に使った魔石と【ブラックゴーレムの魔石】だけだ。折角なのでブラックゴーレムは普通に召喚して使おうかな。
「あぁ~! 頭いたいからもっとゆっくり!」
「ダメだ。マスターがもっと早くと言っている」
「アキラ~」
プラナの背に乗るレッグスが頭を抑えながら声をあげる。それにNOを突きつけるプラナは口角をあげて速度を上げる。ウルドもそうだけど、若干レッグスに強く当たるよな~。僕の親だから嫉妬してるのかな?
僕らはその日に帰路にたった。兵士達に温かく見送られてルインズの村への街道を走り去る。
来る時よりも早くなった二人は一日でルインズに到着する。
「ただいま!」
「お帰りなさい!」
早々に帰ってきて家に入るとエミが迎えてくれる。涙目になって僕を抱くレッグスに抱き着いてくる。二人に挟まれて苦しいけれど、なんだか嬉しい。
「早!?」
「おいおい。本当にいるよ……」
しばらくレッグスとエミが抱き着いてイチャイチャしているとライリーとウィドが様子を見に来る。村の入り口からちゃんと入ってきたから見た人がいたんだろうな。
二人は呆れた表情で迎えてくれてハイタッチを交わす。
「それで? どういう状況だった?」
家に入って椅子に座るとみんなにレグルスエイドで起きたことを話す。
「オーランス!? 国と国の戦争だったってわけか? 魔物じゃなくて?」
「ああ、ゴーレムの魔石を買いあさっていた時期があったらしい」
ライリーが驚いて声をあげる。町で噂されていた話をレッグスが話すとウィドが考えこむ。
「オーランスには行ったことがある。確かにゴーレムの魔石が急に高く売れるようになった時期があったな」
ウィドが話してくれるとライリーが首をかしげる。
「召喚って魔石があれば簡単にできるものなのか? 何千ものゴーレムを作り出すなんておかしいだろ?」
「普通は魔物によってINTが必要だったりMNDが必要だったりするわ。普通のゴーレムはINTが1体につき1必要だと思うわよ」
ライリーの疑問にエミが答える。
そんな制約みたいなものがあったのか。プラナとウルドはどのくらい使ってるのかな? 僕にとっては微々たるものなんだろうな、なにも影響ないし。
「まあなんだ。無事に帰ってきたことを今日はお祝いしようぜ。みんなも集めてな」
難しい話になってきてライリーが考えるのを放棄した。そして、村でパーティーをすることに。
村の明かりが消えない一日だった。
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