第14話 城壁戦

『城壁を崩させるな!』


『こっちにも岩を持ってこい!』


 レグルスエイドにたどり着いた。すでにゴーレムに囲まれている城壁が見えて、城壁上から岩を落としているのが見える。

 あの高さから落ちた岩でゴーレムは倒れているけど、ゴーレムは大きなレグルスエイドを囲むほどの量来ている。1体倒したからと言って意味をなしているようには見えない。


「包囲されてやがる。あれじゃみんな逃げられない。馬車で逃げてきた人たちを見ると一週間前は包囲されてなかったってことだよな。それから更に2日経ってる。たぶん一週間の間、包囲されてる。食料もかなりなくなっているだろう。すぐにでも開放してやらないと」


 レッグスが焦りながら声を上げる。

 籠城戦となると兵士は疲弊するし、食料は枯渇してくる。あれだけ大きな町、避難している人もいるから一週間くらいなら大丈夫かもしれないけれど、いつまで持つかな。


「プラナ、ウルド。町までの道を作れるか?」


「容易いこと」


 プラナに下ろしてもらうと早速乗り込もうと声を上げるレッグス。僕は既に別の事を考えていた。

 そう、あのゴーレムの山が魔石にしか見えない。あれだけあればプラナをもっと強く、ウルドをもっとかっこよくできる。そして、もしかしたら黒い空間への次元を引き裂くほどの魔物が作れるかも。

 居てもたってもいられずに声を上げる。


「バブバブバブ!」


「お、おう……。俺よりもやる気だなアキラ。よし! 頼んだぞプラナ、ウルド」


 僕の声に驚いたレッグスが二人に指示を飛ばす。プラナを先頭にゴーレムの群れに風穴を開ける。片手でゴーレムを粉砕していくプラナ、ウルドも一緒にゴーレムを片付けていく。


『な、何だあの魔物達は!?』


『おい! あれはレッグスさんじゃねえか?』


 城壁上から声が聞こえてくる。みんなレッグスに気が付いて応援が始まる。

 城門の前までゴーレムを片付けると門が開いていく。


「レッグスさん! 帰ってきてくれたんですか?」


「後ろの魔物は? ど、どうゆうことですか?」


 門をくぐると兵士達から質問が飛んでくる。プラナとウルドは今も外で戦ってる。


「えっと……。俺の従魔だ。つまり援軍だ」


「バブ!」


 レッグスが冷や汗をかきながら僕を見つめながら答える。僕が親指を立てて答えると安心したようにうなずく。

 二人は文句を言いそうだけど、赤ん坊の従魔なんてことがわかったら大変なことになる。仕方ないでしょ。


「凄い、ただでさえ強いレッグスさんがテイマーだったなんて……。それもプラチナゴーレムとワーウルフ。これは勝てるぞ。すぐに領主様に報告だ」


 おじさん兵士が歓喜して声を震わせる。すぐに走り出していった。


「現状を聞いてもいいか?」


「その前に城門を閉じます。従魔を中に」


「ああ、そうだったな。(アキラ)」


 兵士の声に答えるレッグス。小声で僕に声をかける。

 二人に中に入るように念じる。すると二人が気が付いて町の中に入ってくれる。


「おお、プラチナゴーレムとワーウルフだ。カッコいいな」


「我はワーウルフロードだ」


 毎度毎度のことながら、兵士たちはウルドを勘違いする。律儀に答えてあげてるウルドは可愛いな。


「ハァハァ。よく帰ってきてくれたレッグス」


 しばらく兵士と現状の話をしていると貴族っぽいお爺さんが詰所に入ってくる。レッグスと握手を交わすと椅子に座って話し出す。


「改めて名を名乗る。儂はこのレグルスエイドを治めておる。レグルス・バン・ロンドじゃ。レグルスと呼んでくれ」


「あ、はい。ではレグルス様。1兵士の意見を聞いてください」


 レグルス様は貴族なのに親しみやすい人みたいだ。にっこりと自己紹介をしてくれて、僕を見ると更に満面の笑みに変わる。子供が好きなのかな?

 兵士から現状を聞いてレッグスは色々考えたみたい。まあ、僕らが倒せば終わりそうだけどね。


「食料が尽きかけているので早急にゴーレムを倒さなくてはいけません。襲い掛かってきている魔物がゴーレムというのがいけない。食べることもできない魔物ですからね」


「そうなんじゃ、奴らは岩でできた魔物。これまで多くの魔物の群れをいなしてきたが、ここまで苦戦したのはそのせいじゃな」


 レッグスの声に立派な髭をさすって俯くレグルス様。食べられない魔物との闘いは大変なんだな。


「というわけで早速片付けていきます。レグルス様はすぐにでも食料を確保できるように手はずを」


「おお、やれるのだな? わかった、食料を確保するように冒険者や行商人を手配しよう」


 早速と立ち上がるレッグス。再度レグルス様と握手を交わすとすぐに城門に向かう。プラナとウルドが左右に立つと英雄の風格が漂う。

 カッコいいなレッグス。僕も早く大きくなりたい。


「二人は自由に動いてくれ。俺は城壁に沿って片付けていく」


「わかった。マスターは?」


「ん……。アキラは城壁上から見ていてくれ。あまり目立つとレグルス様から何を言われるかわからないからな」


 門が開いていく中、レッグスが指示を飛ばす。今回はお留守番か。

 でも、城壁上からなら敵の様子がよく見える。これだけゴーレムがいるなら指導者がいるはずだ。ゴーレムの上の存在、プラナのような強い奴がいるはず。

 その時のために僕は警戒を緩めない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る