第13話 最初の町、レグルスエイドの危機

「レグルスエイドの町が!?」


 ゴーレムの群れを退治した日から二日程が経った。

 レグルスエイドから馬車で逃げてきた人が報告してくれる。レグルスエイドの町からルインズの村までは何もない。この村も危険だと伝えると更に街道を進んでいってしまった。


「どうするレッグス? まだ町は落ちてないみたいだが」


「……」


 家に帰ってきてウィドが声をあげる。

 レグルスエイドの町はゴーレムの群れに町を包囲されている状況らしい。ライリーがレッグスに問いかけるとレッグスは無言でうつむく。


「とにかく、馬車の準備だ。レグルスエイドの町よりも村のみんなのことを考えようぜ」


 レッグスが悩んでいるとウィドが声をあげる。馬はウィドの盗賊団がもっていたものが沢山ある。馬車もあって買う手間が省けたんだよな。エンリャさんみたいに足が不自由になってる人もいる。いつでも村を放棄できるようにしないと。


「……俺はレグルスエイドに戻る」


 口を閉じていたレッグス。悩んだ末に口を開く。


「はぁ? ゴーレムの群れって言ってるんだぞ? 行ったって入れるかどうか」


「……仲間達がいるんだ。助けられるかもしれない」


 レッグスは兵士として働いていた。その同僚が心配なんだな。彼はとても優しい人だから。


「……はぁ~、分かった分かった。行って来いよ。こっちは俺が何とかするから」


「ウィド。すまない」


「奴隷に謝ってんじゃねえよご主人様」


 ウィドが呆れて声をあげるとレッグスは謝って旅の支度を始める。レグルスエイドへは馬車で一週間の距離、早馬なら4日で着くだろう。

 優しいレッグスだから無茶をするんじゃないかな。僕も行きたい。


「バブバブ!」


「おっと、そうだった。レッグス、アキラを連れて行きな」


 僕は一生懸命声をあげる。するとウィドが分かってくれて僕を抱き上げる。レッグスに差し出される僕、彼は首を傾げてる。


「アキラ、遊びに行くんじゃないんだ。戦争なんだぞ」


「バブバブ!」


「行きたいのか? でもな……」


 レッグスの言葉に首を横に振って答える。すると彼はエミを見つめる。

 エミは絶対に僕を危険な目に合わせたくないというだろう。でも、それは僕も一緒なんだ。


「私は二人に行ってほしくない。でも、自分の身も顧みずに人を助けようとするあなたを私は好きになったの……。絶対に帰ってきてね。この村で待ってるから」


 泣きながらそう言ってくれるエミ。本当は行ってほしくないんだろうな。レッグスは優しいから、助けられるならたすけてしまいたいんだろうな。自分を犠牲にしてもね。

 僕はそれをさせたくない。二度と両親に悲しい思いをしてほしくないから。ついていきたい。

 レッグスは僕と同じくらい強いと思う。同じだから彼が勝てない相手に僕が勝てるとは思えない。でも、一緒に戦えば勝てるはずだ。絶対に助ける。


「こっちは任せておけ!」


「俺とウィドでな」


 ウィドとライリーが声をあげて見送ってくれる。すぐにレッグスは僕を抱き上げて馬に乗り込む。


「エミ! 帰ってきたら嫌になるほど抱くからな! 覚悟しておけよ!」


「え!? もう! レッグス!」


 レッグスが指さして宣言するとエミは恥ずかしく顔を隠す。ライリーとウィドが苦笑いするほどの宣言だもんな。村の人達にも聞こえているだろうし、僕も恥ずかしい。

 レッグスは満面の笑みをすると馬を走らせ始める。なかなか早いけど、プラナ達の方が早いな。


「この速度なら4日はかからないな」


 走りながらそう呟くレッグス。プラナ達なら2日も掛からない……今からでも召喚するか。


「急がないと。みんな無事でいてくれよ」


 焦りを見せるレッグス。彼のその顔を見て僕は魔石の入っている服の中に手を入れる。


「ヒヒ~ン!?」


「うお!?」


 馬の前に魔石を放り投げる。黒い空間からプラナとウルドが現れる。まだ見たことのなかったレッグスが剣を構えると、僕がその剣を握る手を握り首を振って見せる。


「わがマスターの父上、我が名はウルド」


「私はプラナ」


 二人は跪いて自己紹介を交わす。レッグスは唖然としながら僕に視線を落とす。


「父上ってアキラの従魔か……。【プラチナゴーレム】【ワーウルフ】を使役って。俺の息子すげぇ」


「……ロードだ!」


「あ、ああ。【ワーウルフロード】だったか」


 ウィドと同じ間違いをするレッグスにウルドが声を荒らげる。

 

「私の背に乗ってください」


「ではマスターは我が」


 馬からレッグスを抱き上げるプラナ。ウルドは満面の笑みで僕を抱き上げる。嬉しそうにしてるから僕も嬉しくなってしまうな。モフモフで気持ちいい。


「馬は勝手に帰るでしょう。では行きます」


「え? あ!? 早い!?」


 プラナは声を上げると走り始める。馬の二倍以上の速度だ。


「おいおい、プラチナゴーレムはこんなに早いのか!? これなら2日でつくかもしれないぞ!」


「ふんっ! 速度なら我の方が早い」


 プラナをほめるレッグスにウルドが鼻息荒く答える。

 僕らは馬車で一週間ほどの距離にあるレグルスエイドに2日でつくのだった。

 しかし、流動食が食べられるようになっててよかった。久しぶりの果物は痺れるくらい美味しかったな~。

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