第12話 圧倒的勝利
「どうですかマスター。我らの力!」
「ははは、ロックゴーレム如きが【プラチナゴーレム】の私に勝てるはずがないだろ~」
ウルドとプラナは途切れなく現れるゴーレムを上機嫌に倒し続けてる。もうすでに20体は倒してるかな……。
魔石が手に入るのはいいんだけど、こんなにゴーレムが現れるなんて、レッグスが言っていたように異常な状況だな。
「バブ……」
このゴーレムが村にたどり着いていたと思うとゾッとする。ウィドやレッグスは強いけど、数で押されたら流石にきつかったはず。
この世界の両親とも別れないといけなくなるなんて考えるだけでも嫌だ。絶対の二人も守らないと。
「「マスター?」」
僕はウルドとプラナの前に立ち魔法を唱える。
「(【豊潤な風よ、我がマナを触媒に風の目を作り出さん、【ウィンドアイ】)」
まだ攻撃魔法を習っていない僕は唯一知ってる詠唱を心の中で唱える。この世界の魔法はいちいち詠唱を唱えないといけない。面倒だけど致し方ない。
ウィドの使ったウィンドアイはただ敵を引き寄せるだけのものだった。だけど、僕のは違う。竜巻のような風の渦巻が現れてゴーレムを天へと吸い上げていく。空から落ちてくるゴーレムが地面と衝突、魔石を残して消えていく。
「我らの小さな力など」
「マスターの一振りにも敵わず」
僕の魔法を見た二人はそう言って跪いてくる。なんだか威厳を示してしまったみたい。
「おいおいおい!? なんだこりゃ!?」
二人の様子を見ていると村の方からウィドがやってきて剣を構えてくる。どうやら、ウルドとプラナを見て警戒してるみたいだ。
「バブ!」
「……アキラか、ってことはその【ワーウルフ】と【プラチナゴーレム】は従魔か」
僕の声で気が付くとウィドは剣をしまう。すると今度はウルドとプラナが警戒して僕を守ろうとする。
「我は【ワーウルフロード】、ただのワーウルフではない」
「そ、それは悪いことを言った。許してくれ」
ウルドが訂正を求めるとウィドは顔を引きつらせて謝ってくれる。
どうやら、【ワーウルフロード】は普通、歴戦の戦士みたいな傷がついているらしい。ウィドや人間側はそれで強さを判断するみたい。
ウィドはブツブツと『わかるわけないだろ』と文句を言ってる。
「なんだ人間? マスターの友と言っても失礼な奴ならば噛みつくぞ」
「な、何でもねえよ。そんな剣よりも切れそうな牙で噛みつかれたら死ぬだろ!」
ウルドに威嚇されるウィド。あったばかりなのに仲がいいな~。
「マスター、ゴーレムの魔石」
その間にプラナが魔石を集めてくれた。ざっと30個はあるな。これならもっと凄い従魔が作れるかな? でもなんかこの子たちはそのままにしておきたいな~。ゴレムとゴブラもそうだったんだけど、試したくて合体させちゃったんだよな。
「マスター。また強化してくれる?」
「バブ?」
プラナがそう言って首をかしげてくる。またって……もしかして、ゴレムの記憶があるのか?
「我も強化してほしい。もっともっと強くなってマスターを守りたい」
プラナの言葉に困惑しているとウルドも声を上げる。やっぱりそうだ、二人は【強化】って言ってる。
合体する前の記憶もそのままで別の魔物に変わってるんだ。合体させる前に別の魔物も召喚したら記憶を保持してるのかも。
「……なんかずるいなお前」
「バブ?」
ウィドがそう言って頬をつついてくる。すぐにウルドに睨みつけられているがお構いなしだ。そろそろやめないとウルドに咬まれるぞ。
「さっきの魔法もお前か? あれは【トルネード】の魔法だよな。詠唱どこに学んだんだ?」
「バブ?」
ウィドは訳の分からないことを言ってくる。あれは【ウィンドアイ】なんだけどな。
「……知らずにやれたってことはもしかして俺の魔法をまねたのか? あれは【ウィンドアイ】なのか?」
「アイ!」
ウィドがあきれた様子で聞いてくる。頷いて元気に答えると彼は思いっきり肩を落とす。
「血のにじむような訓練をしてやっと使えるようになった魔法を。それも更に二段階上の【トルネード】を……」
肩を落とし膝まで崩れると四つん這いで涙を流すウィド。あの魔法は二段階上の魔法だったのか。でも、詠唱も確かにあっていたはずなんだけどな。
「はぁ~、まあ俺よりも強いんだから仕方ねえか。詠唱も話せずにやったからステータスが高くて二段階上の魔法になっちまったんだろうな。羨ましい……。それにサラッと【フォースマジシャン】だしな。泣けてくるぜ」
ウィドはそう言って項垂れる。
なるほど、ステータスに引っ張られて、詠唱を省いたことになっていたから上の段階の魔法が発動しちゃったのか。って、詠唱を省いたことになっていたってことは詠唱をしなくても魔法名だけで使えるんじゃ? 今度やってみよう。
「まあ、なんだ村の人達が驚くだろうから従魔を魔石に戻してくれ」
「バブ」
ウィドに抱き上げられてウルドとプラナをしまう。魔石を革袋に入れてくれて僕に持たせてくれた。流石に20個の魔石は服の中に入れられないな。
「しかし、レッグスの言っていた通りになったな。レグルスエイドは無事なのか?」
ウィドはそう言ってゴーレムのいなくなった方角を見据える。レグルスエイドはとても大きな町だった。あの町がなくなるのは想像もできない。
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