第7話 罠と盗賊
「馬?」
「そうなのよ。剣も二本乗せてあったの」
盗賊を倒して次の日。馬を家に連れてきて剣も置いておいた。何かの足しにしてほしくて持ってきたけど、二人に警戒させることになっちゃった。心配そうに馬を眺めてる。失敗したな~。因みに剣一本はゴブラにあげた。
「ボロボロの鉄の剣か……。まるで盗賊が使うような剣だな」
「何かの警告かしら?」
「どうかな。馬は健康だ。警告なら毒を飲ませて、走れなくして置く、俺ならな」
警戒して推測を話し合う二人。なんか恐ろしい事を言ってるな~。
「まあいいさ。手を出してくるならその時にその手を切り落としてやるだけだ」
レッグスはそう言って一蹴する。馬はありがたくもらってくれるみたいだ。よかった。これで少しは二人の役に立てたかな。
「畑を耕すのに使える。一頭はライリーにやるか」
「ふふ、そうね。馬車を買って畑で出来たものを売りに行ってもいいわね」
レッグスとエミは馬に喜んで未来を描く。畑は村の外に作るなら好きに作ることが出来る。村の中は許可が必要だけどね。
「ちょっとレッグスさん」
「ああ、【カデナ】さん。どうしました?」
喜ぶ二人を眺めていると見知った女性が声を掛けてくる。女性は盗賊と話していた奴だ。レッグスもエミも知っているみたいだな。
ニッコリと微笑んで黒い飲み物の入った瓶を差し出してくるカデナ。
「あなた達の歓迎会を開こうと思ったのですが、村の皆さんも忙しいので私の大好きなお酒をあげることにしました。どうぞ」
「これは……美味しそうですね。ありがとうございます」
あまりにも黒い飲み物にレッグスは驚きながらもお礼を言う。エミもお辞儀をして答えてる。漆黒よりも深い黒、ワインなのかな?
「今日が飲み頃ですからね。必ず今日中に飲んでください」
「は、はぁ?」
カデナは何度も念を押してくる。流石の様子にレッグスもエミも首を傾げる。警戒しないわけないよな。まあ、盗賊は今日は来ないと思うけどね。
何度も念を押してきたカデナは最後にもう一度飲むように言うと帰っていく。怪しすぎて笑いが込みあがってくる。
「レッグス、飲むの?」
「いや、飲まない。まだまだ仕事が残ってるからな」
エミが心配そうに話すとレッグスが答える。そりゃ飲まないよな~。真昼間だしね。
それから日が落ちるまで時間が経つ。すると馬に乗った男が村にやってきた。カデナの家にその男は向かうと悲鳴が上がる。
「キャ~!」
悲鳴と共にカデナの家から火が上がる。男は馬に乗って颯爽と村を去っていった。レッグスが来た頃には男の姿はなく。家は全焼、彼女の死体すら残らない様子だった。人を呪わば穴二つとはよく言ったものだけれど、こんなに早く罰が下るとはな~。
「……盗賊はなんでカデナを?」
「度々カデナは気に入らないものを襲わせていたらしい。男が裏切者と言っていたから金でもだまし取っていたんじゃないか?」
カデナの家の近くに住む男性がレッグスの疑問に答えてくれる。村のみんなが集まっていて情報が集まる。すると彼の話と同じような話をしてくれる人が何人か出てくる。元々あくどい事をしていたみたいだな。
「その……レッグスさん。無視をしていてすみませんでした」
「え?」
カデナが居なくなると村の人達は次々にレッグスとエミに謝り始める。
どうやら、彼女の命令で二人を無視していたみたい。本当は良い人達だったんだな。
「良いんですよ。それよりもあの男の仲間が襲いに来るかもしれない。今日は夜通し見張りましょう」
謝ってくれるみんなにレッグスは答える。盗賊だもんな。何も奪わずにただ去るわけもないよな。
時間が進み、夜の暗闇が深くなる。エミも寝ずに家の中でレッグスの帰りを待ってる。不安なのか神様に祈りを捧げてる。
そんなエミを尻目に、僕は森の中へとハイハイで向かう。カデナと話し合いをしていた、湖への道はがら空きだ。誰も警戒してない。
それなら僕がこの道を警戒しようじゃないか。
「バブ!」
ゴレムとゴブラを召喚。ゴレムがゴブラを肩に乗せて戦闘態勢に入る。僕も肩に乗せてもらうと視野が広がる。
湖までやってくると案の定、盗賊達が集まっていた。
「親分、カデナとか言う女は始末しました」
「よくやった。あの女の情報通り、この湖は安全だな。村に兵士は居ないか?」
「はい、戦力になる男が二人程いるくらいです。他は老人と戦えないものばかりです」
偉そうに椅子に座る親分に報告する男。あの椅子に座ってるのが親分か。それなら大将を先に倒してしまおうか。いや、なんか嫌な予感がする。部下倒してしまった方がいいな。
「ん? なんか音がしたような?」
「ゴッ!」
「な!?」
ゴレムとゴブラを突撃させる。音に反応した盗賊の一人を早々に始末するゴレム、それに続いて横なぎに腕を振るってもう一人を仕留める。
総勢20人はいる盗賊、まだまだ先は長いな。
「ゴーレムだと! それにゴブリンと共闘してやがる。もしや! 従魔か! 召喚士かテイマーがいるぞ!」
親分が勘づいて声をあげる。鋭いな。
目立つ二人はそのまま戦ってもらって、僕は彼らの空に大きな岩を作る。日の光のない夜にこれに気付ける人は少ないだろうな。
「ちぃ、剣を持ってるのか。俺達の剣じゃねえか!」
「こいつらが仲間をやったのか」
さらにゴブラの武器に気が付く盗賊。中々場慣れしてる人たちだな。
でも、僕に気が付くことは出来ていないな。
「ん、離れていく?」
「お、おい!? 上!」
『!?』
ゴレム達を後退させると盗賊が丁度収まる程の大岩を落とす。20人の盗賊を見事にペッチャンコ。これでおしまいだ。
「ゴッ!」
「ギャギャギャ!」
ゴレムとゴブラが喜んで声をあげる。見事な働きだったな。
「ガキ!?」
安心して木陰から出てくると湖の方から声があがる。水浸しの盗賊の親分が驚いて見つめてくる。岩に気が付いてすぐに湖に落ちたのか。
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