第24話

愛子は、鈴木に黒魔術を執行した後、若手監督のコミュニティ会場に戻った。


すると、昔にテレビで少し観たことのあるタレント崩れの年配俳優が、数人の若手監督達を相手取って順番に暴言を吐いていた。


案の定、愛子の所にも近寄って来てーーーー。


「あんたの映画を観たけど、全然怖くなかったしつまらなかったぞ!」


初対面でタレント崩れが凄んで来た!


ヨレヨレのシャツにボロボロのジーパンを履いて、野球帽を被った小汚ない奴にしか見えない出で立ちで凄まれてもと思う愛子だったが、冷静に対応した。


「映画を観て頂き有り難うございます! 色んな感想がある中のひとつとして受け止めさせて頂きます」


「次撮る時は、俺を使ってくれよな!」


(こいつ、散々人の映画を批判しておいて言ってる事が支離滅裂だな…………)


「はい、合う役があればお声掛けさせて頂きます」


愛子は、社交辞令で心にも無い事を大人の対応でかわした。


しかし、愛子の腹の中は煮え繰り返っていた。


(そもそも、新鋭監督のコミュニティなのに、監督でもないタレント崩れが参加している事自体が、おかしい訳で、さっきの鈴木の横にいた金魚のフン女優もそうだけど…………)


(結局、事務所にも見放されて普段仕事が無いから、自分で自分を売り込みに来ているだけなのだろ!)


(しかも、自分の子供位の年齢の若手監督達にな!)


(変なプライドがあって、素直に頭を下げられないものだから、業界の先輩風を吹かせ暴言を吐いて近付くキッカケを作っているのが見え見えで、そのやり方がダサいしカッコ悪く逆に可哀想なんだよ!)


(ちなみに、お前が昔組んでいたトリオの他の二人は、第一線とは言えないが活躍しているではないか!)


(つまり、お前は運と才能と出会う人に恵まれなかったと言う事になる)


(早く田舎に帰って年老いた両親に、親孝行をしてあげなさい!)


(あなた達みたいな田舎者が、いつまでも業界にしがみつこうとするから、都会の人口が増える一方になるんだよ!)


(夢破れたりブームが去ったのなら、さっさと田舎に帰り第二の人生を歩みなさい!)


(その方が絶対幸せになれるから!)


(“好き”だからと言う理由だけで、いい年こいた奴がアルバイトをしながら貧乏生活をして、極めて確率の低い夢を追うのは、無理と限界が有るだろ!)


(いい加減に気付けよ! 諦めも肝心だぞ!)


(悪足掻きをするな! みっともない!)


(痛々しくて見ていられないんだよ!!!)


愛子の心の中の叫びは止まらなかった…………。


怒りが収まらなかった愛子は、コップに入った飲み物をタレント崩れの腐れ年配俳優の顔面にぶっかけた!


そして、逃げるように全力で走って会場を出て行った!

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