第23話
神田に黒魔術師のオフ会に誘われた愛子であったがーーーー。
丁重にお断りしたら神田は、そっぽを向いて颯爽と立ち去って行った。
そして、さっきからずっとコチラの様子を伺っていた鈴木が近寄ってきた。
鈴木は、ヒット作も多数あり、そこそこ名の知れた監督で、新鋭監督の中でも頭が一つ飛び抜けた存在であった。
しかし、出演者の女優に手を出す事でも有名で、悪い噂の絶えない監督でもあった。
案の定、金魚のフンの様に鈴木の横に、ベッタリと付きまとっている奴がいる。
おそらく、鈴木に枕を使って言い寄って、裏方の仕事の手伝いをする条件で役を貰って、愛人にでもなっているつもりなのだろう。
さほど可愛くもなく、中途半端なビジュアルの上、性格の悪さが目に出ていて意地悪そうな面構えをしている。
将来の日本のオカルト映画業界の為に、こう言う腐れ女優は本当に滅んで欲しいと、愛子は心から強く思った。
「鈴木です! 宜しくどうぞ」
「山田です! こちらこそ宜しくどうぞ」
社交辞令で挨拶をする愛子であった。
すると、金魚のフン女優が鈴木に何やら耳打ちをした。
「あっ! そうそう今度一緒にワークショップを開催しませんか?」
「何の為にですか?」
「次回作のキャスティングを兼ねて」
「暫く次回作を撮るつもりは無いので、遠慮しておきます」
「いやいや、実際に撮らなくても良いのですよ」
「どう言う事ですか?」
「次回作の映画のキャスティングを匂わせて、日頃仕事の無い俳優達をワークショップに参加させて、参加料を貰うだけですから」
「それ詐欺じゃないですか!?」
「食えない監督は勿論の事、日銭稼ぎに皆やっていますよ!」
「本当ですか?」
「ひどい所になると、事務所ぐるみで最もらしく当たり前の様にやっていますよ」
「腐ってる…………」
「今更何を言っているのですか! 綺麗事だけでは食べて行けない世界じゃありませんか!」
「それにしても騙すのは酷い!」
「騙される方が悪いのです! そう言う業界でしょ!」
「純粋に演技が好きで映画に出たいと思って、直向きに頑張っている俳優が可哀想…………」
「そんなのは、ほんの一部ですって!」
「そんな事は無い!」
「こいつなんて役が貰えるなら何でもしますよ」
と笑いながら鈴木は、金魚のフン女優の頭をポンポンと叩いた。
そして、見下す様な眼差しでーーーー。
「売れたもの勝ちよ」
と金魚のフン女優は、吐き捨てる様に言った。
(こいつらグズだ………… 終わってる…………)
愛子は、そう呟きながら悔しくなった。
追い討ちを掛ける様に鈴木は続けた。
「ねぇ、日銭稼ぎましょうよ」
「お断りします!」
「どうせ仕事も才能もない奴らが、お金払ってコネとチャンスを求めて来ているだけですから」
「…………」
「じゃあ、名前だけ貸して下さいよ!」
「どう言う事?」
「売り上げの二十パーセントでどうでしょう?」
「売り上げって………… どこまで腐っているの!」
「まぁまぁ、そんなに怒らなくても」
愛子の古傷が痛み出した。
「あなたとは、関わりたくないので失礼します!」
愛子は、その場から立ち去り久しぶりに黒魔術を執行したーーーー。
そして、いつになく力強く印を結び呪文を唱えた!!!
「堊・丱・彌・穭・沮・霊・窩・娜…………」
数日後、鈴木は複数の女優達からセクハラで訴えられ、映画業界から追い出される形になった。
金魚のフン女優は、極度の犬アレルギーを引き起こし、飼っていた犬を引き払う事になり、酷いワキガとインキンタムシを煩い、元々鈴木の作品にしか出演出来なかった為、共倒れになり自然と映画業界を去って行く事になったのは言うまでもない。
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