第20話
愛子は、気になっていた事を聞いてみた。
「ちなみに、受け売りなのですが、監督をするキッカケは何だったのですか?」
「僕の場合は、俳優をしていてうだつが上がらない時期に、アルバイト仲間と遊びで撮った自主制作映画が、プロアマ問わない映画祭で入選したのが、キッカケになり撮り続けている感じです」
「遊びでですか?」
「はい、遊びでです」
「どれ位の期間で撮ったのですか?」
「三日間位ですかね」
「脚本は?」
「僕が書きました!」
「カメラや編集は?」
「全部僕です!」
「私と同じですね!」
「えっ! そうなんですね! 光栄です!」
「遊びで撮って入選するなんて、才能があるのじゃないですか?」
「いや、でもそれが原因で当時所属していた事務所のマネージャーの反感を買いまして…………」
「どうしてマネージャーの反感を?」
「何でもマネージャーになる前は、自主制作映画を撮っていたらしく、大学生時代も映画研究部に入りながら、切磋琢磨して撮っていたみたいです」
「では尚更、自主制作映画には詳しいのでは?」
「そう、詳し過ぎるのです」
「だったら問題無いでしょ!」
「それが大問題なのです!」
「理由は何ですか?」
「マネージャーが、大学生時代から入選を目標にしていた映画祭に、僕の遊びで撮った自主制作映画があっさりと一発で入選したから、それを妬んでいるのです」
「厄介ですね」
「しかも、おもいっきり私情を挟まれて、オーディションで勝ち取った映画の役やCMも、裏で色々な理由を付けて知らない所で勝手に断っていたのですよ!」
「マネージャーとして最低ですね!」
「でしょ! 映画に関しては、後に国際映画祭で四冠に輝いたのですよ!」
「あらっ勿体無い!」
「それで、その映画に出演していた俳優は何人か売れましたし…………」
「何がキッカケになって売れるのか、分からない世界ですからね」
「そうですよ、本当に悔しいです…………」
「器用なだけに、簡単に何でもこなしてしまうから、余計に妬まれるのですね」
「これでも、人知れず努力はしているつもりですけどね」
「また、人前で努力を見せないので、何の苦労もしていないように写るのでしょう」
「そんなものですかね…………」
愛子は、トイレに行ことして立ち上った瞬間、椅子がテーブルに引っ掛かり、グラスを落として割ってしまった。
「大丈夫ですか? 怪我はないですか?」
素早く対応する大山。
「有り難う、大丈夫です」
「後は、やっておきますから用事を済ませて来て下さい」
「あっはい」
トイレから戻ってきた愛子は、一生懸命に割れたグラスを片付けている大山の優しさに触れ感銘を受けた。
どうにか、この人を幸せにしてあげたい…………。
すると、古傷が痛み出した!
そして、気づいたら愛子は白魔術を執行していた!
印を逆に結び、呪文を逆に唱えてーーーー。
「娜・窩・霊・沮・穭・彌・丱・堊…………」
まだ、何の手応えも効果も実感もないがーーーー。
只々、大山の幸せを願い執行する愛子であった。
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