第21話
そして、大山と入れ替わるように現れたのがーーーー。
ぬぼーーとした背の低い男だった。
「こんにちは、神田です」
「あっ山田です」
「随分とお忙しい様ですね」
「いえいえ、今は休暇中ですし」
「えっ! 奇遇ですね! 僕も色々あって休暇中なのですよ」
「色々って何ですか?」
「早く言えば騙されたのです…………」
「誰に騙されたのですか?」
「プロデューサーに騙されました」
「どうやって?」
「それが、制作費を誤魔化されて半分で撮らされたのです」
「それは大変でしたね」
「はい………… 結局、制作費が全然足りないので架空の会社を作り、銀行から融資を受けて補填して撮るしかなかったのです」
「あらら…………」
「更に、キャスティングに携わってる奴が、俳優陣の足下を見て言葉巧みに上手く言いくるめ、アゴ・アシ・マクラを付けるからと、ノーギャラでの出演を持ち掛けてギャラを持ち逃げしたのです」
「悪い奴ですね」
「更に更に、プロデューサーは映画監督もしていて、僕の映画の公開日に合わせて、自分の撮った映画をぶつけてきて集客の邪魔をして来たのです」
「話しだけ聞いていると完全な嫌がらせですから、神田監督がプロデューサーに何か恨みでも買っている様にしか思えないのですが…………」
「思い当たる節はないですけど」
「それとも、良いように使われているだけとか?」
「はぁ…………」
「悪縁は、切った方が良いですよ」
「はぁ…………」
「何か、まだありそうですが」
「まだあります、聞いてくれますか?」
「ここまで来たら最後まで聞きますよ」
「僕の映画に関わったスタッフや俳優が、不幸になると噂が広まって困っているのです」
「例えば?」
「まず、撮影の休憩中に女優が大怪我をしたり、映画のエンディング曲を歌ってくれたバンドが解散したり、助監督が業界を辞めて田舎に帰ったり、メインキャストが病気で亡くなったり、犯罪に手を染めて逮捕されたり、引退したりと」
「確かに、そこまで重なると…………」
「裏では、あいつの映画に出ると呪われるとまで言われています」
「可哀想だけど、現実にそうなってしまっている以上は、致し方がない気がしますが」
「やっぱり、そうなりますよね」
そう言って、グラスに入った飲み物を一気に飲み干す神田であった。
しかし、愛子は神田の指先に出来たタコが気になった。
理由は、魔術師が魔術を執行する時に魔術器を使うのですが、その時に出来る特有のタコだからであった。
愛子は、すかさず聞いてみた。
「あのーーーー 違ったらごめんなさい」
「何がですか?」
「その指先に出来たタコの事なのですがーーーー。」
「あっ! これですか? いや………… あの………… これは…………」
明らかに動揺する神田であった。
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