第16話
残りの撮影も予定通り何とか撮り切り、クランクアップを迎えた。
そして、愛子の監督第三作品目の映画は、単館の観客動員数を更新しロングラン上映になり、大ヒットを飛ばした!
更に、全国の単館での上映も次々に決まった!!!
その効果もあり、監督の仕事のオファーが、ひっきりなしにやって来る。
愛子は、勢いに乗り立て続けに三作品も撮ったので、心身共に疲れが出ていた。
特に、業界の闇の部分に触れた事による影響は大きい様で…………。
そこで、少し充電期間として休む事にした。
暇潰しを兼ね同じ穴のムジナを求めてーーーー。
若手の監督達が、一同に集うコミュニティに参加してみる事にした。
一重に若手監督と言っても年齢は様々で、四十代の監督もゴロゴロいた。
夢を追う者達には、年齢は余り関係ないようだ。
本来ならば、社交性に乏しい愛子にとって苦手な場所なのだが、同じ考えや価値観の合う者を探し求める為には、背に腹はかえられぬと言う事で、隅っこの方で周りの様子を伺っているとーーーー。
体格の良い四十代前半の監督が話しかけて来た。
「山田愛子監督ですよね」
「あっはいっ…………」
「自主制作映画を撮っている真田徹と言います、宜しくお願いします!」
「こちらこそ宜しくお願いします…………」
「監督の世界観が好きで、全作品を拝見させて頂いています」
「あっ有り難うございますっ…………」
「今も次回作を撮っていらっしゃる最中ですか?」
「いや………… 今は暫しの休息中です…………」
「そうでしたか! それでこちらに来られた訳なのですね」
「まぁ………… はいっ…………」
「ちなみに、出会う監督の方々にお伺いしているのですが、ちょっと質問しても宜しいでしょうか?」
「どうぞ…………」
「監督をする事になったキッカケを教えて頂きたいのですが」
「それは………… 好きなオカルト映画が、自主制作映画だった事に感銘を受けて………… 私にも出来るかもって思ったので…………」
「そうだったのですね!」
「貴方は?」
「私は、元々俳優をさせて頂いていたのですが、見た目には分からないですが、目の病気になり左目がほぼ失明状態で、体も昔の無理が祟りボロボロで原因不明の関節痛に悩まされ、おまけにパニック障害を患い、俳優として思う様にパフォーマンスが出来なくなったので、撮る側を経験してみようと思ったのがキッカケです」
愛子は、“パニック障害”と言うフレーズに過敏に反応し共感を持った。
すると、嘘のように強張っていた緊張が一気に解けた。
「えっ! 突然パニック障害に?」
「はい、偶々重なった仕事とバイトのスケジュール調整が上手く行かずに許容範囲を越えたみたいで…………」
「事務所やマネージャーに頼めないのですか?」
「それがフリーで俳優をしていると、全て自分でやらなければならないのが性なのです」
「大変ですね」
「はい、中でもギャラの交渉が一番大変でした」
「どうしてですか?」
「高く見積もると生意気だと思われ、逆に低く見積もると舐められるので…………」
「それは難しいですね」
「はい…………」
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