第13話
撮影も後半に差し掛かった頃ーーーー。
義理のあるプロデューサーに、紹介された女優を使わなくてはならなくなった。
お世辞でも上手いとは言えない演技なので、正直困ったが、本編には余り関係の無い少し箸休め的な部分のシーンで出演して貰う事にした。
しかし、台詞も棒読みで酷い演技だった。
聞く所に寄ると、彼女は女優でも何でもなく、プロデューサーが足繁く通っているキャバクラのお気に入りのキャバ嬢だった。
おそらく、俺は映画プロデューサーをやっていると自慢しながら、キャバクラで吹聴しまくっているうちに痛いキャバ嬢がーーーー。
「私も出た~い! 出して~!」
と言って来たので、いい格好をしてーーーー。
「出たいの? いいよ、出してやるよ!」
って言っちゃたのでしょう。
更にはーーーー。
「本当に出してくれるの?」
「俺は、映画プロデューサーだぞ! 一番偉いから誰も俺には逆らえないからな!」
「すご~い!」
こんなやり取りがあったに違いない。
それで、現場が被害を被る訳になったのだ…………。
ここは、お世話になっているプロデューサーの為に、一肌脱いでーーーー。
誉め殺しで撮影を乗り切る事にした愛子であった。
下手くそな演技を誉めるのも疲れる。
誉め方によってはバレるし、言葉選びも大変なのだ。
しかし、この女優いやキャバ嬢は、笑っちゃう位に相当な天然ちゃんなので大丈夫みたいだけど。
プロデューサーは、こう言う天然な所が可愛いくて仕方がないのだろうね。
愛子は、何か腹が立って来たので、さっさと撮影を終わらせる事にした。
そして、プロデューサーには悪いけど、素人を出演させせたくないので、尺の問題とか色々理由をつけて、本編ではこのシーンは全カットさせて頂きます!
だって素人に役を奪われた、オーディションで落ちた俳優達が可哀想だから。
映画を舐めてんじゃねぇぞ!!!
って事でーーーー。
素人を使わされて、作品をバカにされた監督としてのせめてもの抵抗でもあるし。
出演していないけど、エンドロールには名前は掲載しておいてやるから安心しな!
このキャバ嬢には、試写会は呼ばず本編を観て気づいて貰う事にしよう。
だから、映画の宣伝は公開されるギリギリまで頑張ってくれる事だろう。
(悪く思わないでね、私の映画は素人が出演出来る程、甘くないから!)
と愛子は呟きーーーー。
(出演したければ、演技を勉強してからオーディションを受けに来て下さい!)
と更に、強く呟いた。
愛人を映画に出演させるプロデューサーがいるとは、噂レベルで聞いた事があったが、こんな身近に本当にいるとは。
非常に残念がる愛子であった…………。
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