第12話
今日は、子役のシーンを撮影する日です。
しかし、ここでアクシデントに見舞われた。
オーディションで合格した子役が、撮影当日の今日の朝に高熱を出し、突然の体調不良を訴えて降板した。
焦った子役のプロダクションが、撮影に迷惑を掛けまいと急遽、別の子役を用意してくれたので助かったのだがーーーー。
当日で用意出来る子役は、当然少なく限られている。
しかも、長い台詞もあり、それなりの配役なので誰でも良い訳ではない。
それなりの演技力が求められる。
その全てを踏まえて、子役のプロダクションから送り出されて来た子役が、入り時間を数時間遅刻して来た。
「おはようございます!」
一応、プロダクションに所属している子役だから挨拶は出来る。
しかし、大人を何人も待たせていたにも関わらず、遅刻に対する謝罪はなかった。
更に言えば、プロダクションを背負って来ている訳なのだから、例え急遽用意された代役でもプロダクションの失態も謝るべきではないだろうか?
これが、形式や型としきたりにうるさい日本の建前社会のルールなのだから。
流石に、子役にそれを要求するのは可哀想なので、せめて付き添いの母親かマネージャーが、そうするべきでしょう。
ってマネージャーの姿が見当たらない。
普段は、売れてないので付いていない子役でも、今日だけは付けとこうよ。
このプロダクションは、どうなっているんだよ!
撮影が終わったら、絶対にクレームを入れてやる!
じゃあ、百歩譲って付き添いの母親が、マネージャーの役割を果たすべきだろ!
って母親のビジュアルがヤバい。
とても常識が通用するような感じではない…………。
ヤンキー上がりならまだしも、どう見ても現役だから。
金髪ロン毛の付け睫、超ミニスカートを履いて露出の多い派手な服装で、メイクもネイルもバッチリで肩口にタトゥーが入っており、言葉使いも態度も悪く、ずっと大股開きでスマホをいじっていた。
お腹をボリボリ掻きながらーーーー。
「ママ! 腹へった!」
故に、子役の言葉使いと態度は親譲り。
愛子の嫌いなタイプ…………。
間に合わせにしても程がある。
おそらく今日空いていて、すぐに来れる子役が、こいつしか居なかったのだろう。
親の顔が見てみたい!
ややこしいけど、子役の母親の親の顔がね。
しかし、見かけとは裏腹に演技は出来る!
それも子役としては結構なレベル。
長い台詞も一発オッケー!!!
何故、この子役に仕事が来ないのか不思議な位の良い演技だった。
でも、やっぱり原因はあるものだ。
兎に角、素行と態度が悪い。
ケイタリングのお菓子を食べ散らかしたり、飲み物をテーブルに溢しても拭かなかったり、ロケ弁を食べたら食べっぱなしで後片付けをしなかったりと。
普通は、母親がカバーする為に付き添いで来ているはずなのに、母親も同じ事をしている。
“子は親を見て育つ”とは正にこの事…………。
挙げ句の果てには、監督の愛子に指をさしてーーーー。
「ママ見て! あれっ! 監督の歯黒くない?」
「本当だね! 歯磨きしてねぇんじゃね?」
愛子は昔、継母の連れ子を魔術の実験台にしていた時に、失敗して連れ子にかけた魔術が自分に返って来て、二週間寝込んだ後に、お歯黒の様に歯が黒くなっていたのだった。
これが、歯医者でホワイトニングを何回もやったのだが、効果が得られなかったのだ。
気にしている事を言われた愛子は、これまでの子役と母親の素行振る舞いと態度や言動を振り返えると、無性に腹が立ってきた。
そして、今までは妬んだ時に痛んでいた古傷が、ここ最近ムカついたり腹が立ったりした時にも痛み出す様になっていた。
愛子は、子役の撮影部分の撮りこぼしがないか入念にチェックした後ーーーー。
子役と母親に印を結び呪文を唱え魔術を執行した。
「堊・丱・彌・穭・沮・霊・窩・娜…………」
そして、数日後ーーーー。
子役は、突然オネショをするようになり、既に虫歯になった状態の親知らずが二本生えてきたらしい。
母親は、脱毛症になり、極度の歯槽膿漏になったとか。
病院に行ったが、二人共原因は不明だった…………。
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