第11話

今回は、愛子の思い通りに撮影は順調に進んでいたかの様に思えた。


しかし、そんな中で準主演の俳優のプロダクションから要望が入った。


その内容とはーーーー。


準主演の俳優が、端役の俳優を取り押さえるシーンがあるのだが、その時に二人の顔がアップになるカットがある。


それに物言いが付いたのでした。


愛子は、常にモニターを観て演技などのチェックをしていたら、準主演の俳優のチーフマネージャーに突然呼ばれた。


そして、チーフマネージャーに言われた言葉が、とても信じられなかった。


準主演の俳優と端役の俳優の顔が、画面上にアップになった時に端役の俳優の方がイケメンなので、視聴者は準主演の俳優ではなく、端役の俳優の方を観てしまう恐れがあるので、端役の俳優を降板させて欲しいと言ってきた。


愛子は、何だそれ?


と思い、それは出来ないと断ると、更にとんでもない事を言われた。


「では、うちの俳優は降板させて頂きます!」


と、既に半分以上撮っているので、今さら降板されては困る事を知っていて、こんな脅しの様な事を平気で言って来るのだから、本当にたちが悪い。


愛子は、納得出来なかったが悔しかったので、端役の俳優に本当の理由を洗いざらい話した。


すると、端役の俳優から思わぬ言葉が返ってきた。


「現段階での知名度と人気には勝てないので、しょうがないです…………」


「何も出来なくて、ごめんね…………」


「いや、とんでもないです! 役者として未熟者だっただけの話しですから」


「全然、そんな事はないよ」


「有り難うございます! お世辞でもそう言って頂けると嬉しいです! 今度、監督と御一緒するまでには、もっと成長して逆の立場になれるように精進して頑張ります!」


「うん! 期待してるよ!」


愛子は、監督として不甲斐ない自分が情けなかったがーーーー。


役者として貪欲で向上心があり、ポジティブで芯の強い端役の俳優の言葉を聞いて、とても頼もしく感じた。


愛子は、こう言う“役者バカ”が好きなのです。


すぐ近くに、こんな素敵な俳優がいたなんて!


まだまだ日本オカルト映画業界も、満更捨てたものでは無さそうだ。


愛子は、準主演の俳優のチーフマネージャーに、相当腹が立った!


そして、色々考えて、こう言ってやった!


「そもそも、あのシーン自体はストーリー上、本来どうでも良い場面なので、本編の全体的な尺を考えてカットをする事にしました」


「…………」


チーフマネージャーは、言葉を失っていたがーーーー。


そこまでしても、阻止したかった事なのだろうか?


しかも、端役の俳優を自分のお抱え俳優よりイケメンだと認めていたし…………。


そこは、知名度と人気と演技力を信じてあげようよ。


こんなお門違いのチーフマネージャーがいるから、この俳優も現状で満足して、これ以上育たないんじゃないの?


だから、今回も準主演で“準”が付くのだよ!


この俳優も周りに恵まれず、逆に可哀想な感じがしたら、古傷が心地良く痛み出した。


愛子は、チーフマネージャーに印を結び呪文を唱え魔術を執行した。


「堊・丱・彌・穭・沮・霊・窩・娜…………」


次の日、端役の俳優のプロダクションが、大手プロダクションの傘下だった為、事の顛末を知った業界で影響力のある方が、裏で手を回しチーフマネージャーを首にしたらしい。


そして、チーフマネージャーは、職を失い足が異常に臭くなる奇病にかかり、自分の足の匂いで吐き気と頭痛が止まらない状態が続いているようだ…………。

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