第9話

残りの撮影も何とか撮りきり、愛子的には長かった撮影もようやく終わった。


そして、劇場公演映画の監督第二作品目も大ヒットを飛ばした。


新鋭監督として勢いに乗る愛子であった!


次の監督作品も決まっており、大々的に出演者の公開オーディションを開催する事になった。


主演からメインキャスト、端役まで全てオーディションで選ぶ予定なのだが、プロデューサーから主演は、この子で決まっているので宜しくと伝えられた。


新人発掘コンテストで、三万人の中から勝ち抜いてグランプリを獲得し、開催プロダクションに所属して、一発目の仕事が映画の主演。


しかも、もっぱら出来レースだと噂をされているコンテストだった。


案の定、今回の映画の主演もオーディションから抜擢するはずだったのに、彼女に決まっていた。


メインキャストも、彼女と同じプロダクションの俳優達がオーディションを受けに来るのだが、台本の準備稿の段階で既に彼女と共に名前が掲載されている。


所謂バーターって奴です…………。


オーディションを開催する意味があるのか?


愛子は、単純に疑問に思った。


しかし、全てがそうじゃないにしてもオーディションとは名ばかりの建前で、何千人何万人の中から選ばれたと言う箔を付けたいだけのものなのでしょうか?


悲しい事に、主演をはじめメインキャストも愛子のイメージとは違った…………。


しかも、主演は新人なので、それを演技力でカバーする事は、到底無理があるだろう。


愛子は、台本を書き換えるしか無かった。


打ち合わせと演技指導と称して、主演とメインキャストをワークショップに参加して貰い、各々のキャラクターを理解した上で“当て書き”をする事にした。


まだ、台本も準備稿だった為、これから第一稿、第二稿第三稿と決定稿まで何回も書き換えて行く段階だったので良かったが…………。


これから商業映画を撮るに連れて、規模が大きくなればなる程、こう言う事が発生すると見据えていかなければならないと、肝に銘じた愛子であったがーーーー。


そこに輪をかけてラインプロデューサーから、お願い事をされた。


ノーギャラでスタッフの仕事を手伝う事を条件に、何でも良いから役を挙げて欲しいと数人の俳優達を紹介された。


こいつらも実力が無く、ビジュアルも中途半端な上にオーディションで役を勝ち取る事が出来ないから、コネを使って出演しようとして来る。


その根性が気に食わない。


中には、役をお金で買う奴らまでいる。


そんな事をする奴らがいるから、足元を見られて売れてない俳優は、まともなギャラが貰えず、売れないと食えなくなるのだよ!


だから売れないと職業として成立しなくなり、いい年こいてアルバイトをしながらカツカツの生活を送って続けている、みっともない奴らが増えるのだよ!


制作側にとっては、言い様に利用出来て好都合かもしれないが、愛子にとっては迷惑極まりない事なのだ。


こうやって端役まで決められてしまうのか!?


これも全てがそうじゃないと思いたいが、こんなキャスティングをしていて、これからの日本オカルト映画は大丈夫なのか?


これでは、愛子のイメージ通りの作品にするのは難しくなる一方だ。


こんな縛りと規制された枠の中で、監督としての色や個性を出して、尚且つヒットさせろと言うのだから困ったものだ。


そして、コケたら代わりは幾らでもいるからーーーー。


はい、サヨウナラと切られておしまい。


これで良いのか?


良いはずがない!


日本オカルト映画業界の将来を憂う愛子であった…………。

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