第3話
目的を果たした愛子は、休みがちだった高校に通い始めた。
久しぶりに登校して来た愛子を見たクラスメイトは皆、若干引いていた。
そこには、背は低く青白く痩せ細り、オカッパ頭でギョロっとした大きな目の下には酷いクマがあり、薄気味悪い独特な雰囲気を醸し出す愛子の姿があった。
愛子が席に着くと、机の上に一輪の菊の花が花瓶代わりにされたペットボトルに生けられていた。
イジメである。
愛子は、犯人を探した。
すると、思いもよらない人物の仕業だった事が分かった。
入学当初から、優しく接してくれていた綾子だった。
愛子は、授業を終え下校際に綾子を睨み付けた。
綾子は、目をそらし足早に立ち去って行った。
三日後、綾子は学校を休んだ。
理由は不明だった。
愛子は、不適な笑みを浮かべて席に座っていた。
綾子が、学校を休んで一週間が経った頃ーーーー。
クラスの不良グループが、愛子の容姿を揶揄った。
愛子は、三人の不良を一人一人睨み付けた。
不良は、愛子の目付きが気に食わないと言って、順番に唾を吐きかけた。
そして、リーダー格の一人は、愛子の頭をコツいた。
五日後、不良達が次々とバイク事故に遭遇した!
一人は、腕を骨折しており、もう一人は足を骨折した。
そして、リーダー格の一人は意識不明の重体に陥った。
更に、理由不明だった綾子も保護者から学校に連絡が入り、うつ病を発症した為、状態が良くなるまで暫く休むと休学届けが提出された。
立て続けに、こう言う事があったせいなのかーーーー。
クラスの中で、愛子をイジメると災いが起こると噂になっていた。
そして、いつしか愛子に逆らう者は居なくなり、腫れ物扱いをされる様になった。
クラスメイトは、口々に“触らぬ神に祟りなし”と陰口を叩いていた。
季節も変わり、文化祭のシーズンが近づいて来た頃ーーーー。
クラスの出し物を相談する事になった。
担任の村田が、皆に意見を伺った。
「俺、たこ焼きがいい!」
「私は、クレープ屋さん!」
「満面の星空を写し出したプラネタリウムだろ!」
「演劇にしない?」
「バザーみたいな物品販売も良くない?」
色々な意見が飛び交う中ーーーー。
「占いの館…………」
愛子がボソッと言った。
そして、多数決を取る事になった。
結果は、満場一致で占いの館に決まった!
不思議に思った村田は、皆に問いかけた。
「皆! 本当に占いの館で良いのか?」
「…………」
皆、無言になる。
釈然としなかった村田は、順番に問いかけた。
「三浦! 本当に良いのか?」
「………… はい」
「伊藤も良いのだな!」
「多数決で決まったので…………」
「皆川もか?」
「はい…………」
「………… 分かった、一年B組の出し物は占いの館で決まり!」
村田は、納得出来なかった。
この後、村田は個人的に愛子を職員室に呼び出した。
「なぁ山田、お前に変な噂があるけど知っているか?」
「…………」
「話したくなければ、それでも良いが」
「…………」
「正直、先生もお前がイジメに逢っている所を目撃した事はある」
「………… どうして助けてくれなかったの?」
「あっ……… いやっ………… それは…………」
必至に誤魔化そうとする村田。
「ねぇ、どうして?」
「それはそうと最近皆が、お前に対する接し方がおかしいのは何故だ?」
「こっちが質問しているんだけど!」
「そもそも何だ! その口の聞き方はっ!」
「話しを逸らさないでよ!」
村田を睨み付ける愛子。
「何だ! その反抗的な態度と目付きは!?」
「あんたみたいに見て見ぬふりをする先生が、いるからイジメは無くならないんだよ!」
「何だと!もう一遍言ってみろ!」
「自分の保身ばっかり考えやがって!」
パシッーーーーン!!!
カチン! ときた村田は、感情を抑える事が出来ず反射的に、愛子の頬を力一杯引っ張叩いた!
愛子は、再び睨み付けて走り去って行った。
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