第21話 新たな武具
俺たちは採集したドラゴンの逆鱗を馬車に積み、王城に戻った。
するとさっそく、王様から呼び出しがあった。
きっと、勝手にドラゴン退治に出掛けたこと、怒られるだろうなあ。
王様が口を開く。
「コホン。勇者様にパンテオン様。
まさか、ドラゴンを狩りに行かれているとは・・・。
さすがじゃ!!!」
え?怒られるどころか、褒められたんだが?
「あははは。まあね・・・。」
俺は王様のお褒めの言葉にとりあえず便乗して答えた。
しかし、なぜ褒められるのだ?
「実は、ドラゴンの逆鱗は我が国の装備品づくりに大変重要なのじゃ。
ドラゴンの逆鱗を用いた武具があるからこそ、我が国の軍隊は各国最強の軍隊であるといっても過言ではない。
じゃが、ドラゴンの活性化により素材を入手できず、素材不足でのう・・・。
そのことを知って、わしにサプライズでドラゴン狩りに出掛けたのじゃろう?
なんとうれしいことをしてくださる勇者様じゃ!」
な、なんかいい感じに勘違いしてくれてる!
「ま、まあね。
でも正直、王様がヴィエゴ将軍をこちらに向かわせてくれていなかったら、今頃俺たちはドラゴンの胃の中だった。
恩に着る、王様。」
俺たちはヴィエゴ無しではドラゴンの逆鱗は入手できなかっただろう。
ナイスアシストだ、王様!
「ふぉっふぉっふぉ。そんなことお安い御用じゃよ。
余計なお世話かとも思ったが、うちのヴィエゴが役に立って何よりじゃわい。」
なんて気の利く王様なんだろう。
RPGゲームの中の王は見習ってほしいものだ。
あいつらときたら、勇者のために何もしないからな。
「ただ、ドラゴンの逆鱗はユキにも分けてください。
ユキの装備を整えたいんです。」
「ああ、当然じゃとも。
勇者様、好きなだけ逆鱗を使ってくれ。」
よし、これでようやくドラゴンの逆鱗で一級品の武具が作れるぞ!
俺たちは玉座の間を後にし、ブランブルのもとへと向かった。
---
「ブランブルさんはいらっしゃいますか?」
ブランブルには敬語が必須。
王様ですらタメ口許してくれてるのに、なんでブランブルには敬語なんだか。
すると、ブランブルが工房から出てきた。
「おうわが友よ!」
え?
わが友?
ブランブルと友達になった覚えはないが?
「どうしました、ブランブルさん?」
ブランブルはいつになく上機嫌だ。
「いやあ、敬語などよさんか、水臭い。」
お前が敬語使えって言ったんだろ!
「あ、ああ。
いつになく上機嫌だな、ブランブル。」
「そりゃあ、こんな数のドラゴンの逆鱗、見たことねえからな。
つい興奮しちまった。
これからこいつらの加工で大忙しよ!
こいつは腕がなるぜ!」
仕事大好きなんだな、ブランブルは。
俺は前世じゃ仕事大嫌いだったから気持ちは理解できんが・・・。
俺がブランブルの立場なら、よくも仕事を増やしてくれたなこんちくしょう!って間違いなく言ってる。
「ユキの装備も頼むぞ、ブランブル。」
しかし、この国の兵隊の装備も大事だが、まずはユキの装備だ。
「ああ、もちろん。
最優先でお前さんの装備は仕上げる。
しかしな、もう少し待ってくれ。
さすがにすぐに用意、とはいかん。」
「やったー♪
新装備!新装備!」
ユキも上機嫌だ。
「そうだ!ルティアーノにも装備を作ってくれないか?」
ユキだけじゃなく、ルティアーノにもほしいよな。
「いや、その必要はない。
ルティアーノの装備は既にドラゴンの逆鱗からできた一級品だ。」
え、そうだったの?
ああ、だからドラゴンに一太刀浴びせられたんだ。
ルティアーノは『龍千切り』という技でドラゴンに切り傷を与えていた。
ドラゴンの硬いうろこには逆鱗製の装備が一番というわけだな。
ブランブルは入手した逆鱗を見つめて続ける。
「いや待て。
この逆鱗・・・。
ドラゴン活性化前の逆鱗に比べて、質が上がっている。
よし、ルティアーノの武具も作り直してやる!
前よりも頑丈なものが出来上がるだろう!」
まじ?
やったね!
頼んでみるものだな。
「しかし、お前さんら。
よくもまあ、こんな大量のドラゴンの逆鱗を集めたな。
どうやったんだ?ぜひ教えてくれ!」
ブランブルは興味津々だった。
「まあ俺たちだけじゃ厳しかったな。
ブランブルがヴィエゴに、俺たちがドラゴン狩りにいったということを伝えてくれなかったらマズかった。
ドラゴンの逆鱗を入手できたのはブランブルのおかげでもある、恩に着る。」
「そりゃ良かった。
お前さんたちだけじゃ分が悪いと思ってな。
一応、ヴィエゴに伝えておいて正解だったな。」
王様といい、ブランブルも気が利くねえ。
最初は冷酷なガンコジジイとか思ってたけど、気を許してくれればなかなか良いやつじゃない。
「それで、装備の完成にはどれくらいかかるの?」
ユキが質問した。
「そうだな、1か月くらいはみてくれ。」
1か月か。案外早いんだな。
「わかった、楽しみにしてる♪」
そうして1か月の間、俺たちは格闘術の稽古をしつつ待った。
---
1か月後・・・。
「よおし!完成だ!」
ブランブルが叫んだ。
「これら装備は、名付けて、『ドラゴンの軽装シリーズ』だ!」
ユキはさっそくその装備に着替えた。
わお!なんてかわいいんだ!
逆鱗の髪飾りは頭部を加護し、胸当てはしっかりと硬くガードされている。
そして、腰回りはへそ出しになっていて、動きやすくなっている。
格闘術において、腰の動きは重要だからな。
それで動きやすく軽装にしているのだろう。
靴の先端にもドラゴンの逆鱗が使われている。
つま先キックが強そうだ。
それに、打撃用グローブもドラゴンの逆鱗仕様だ。
これでドラゴンパンチを繰り出せば、ドラゴンのうろこだって貫通してしまうだろう。
「打撃用グローブはただ殴るだけじゃないぞ。
ここのボタンを押すとな、爪が出るんじゃ!
この爪は魔鉱石とドラゴンの爪からできておる。
たいていのものは切り裂けよう。」
ブランブルがボタンを押すと、シュッ!!と爪が出た。
「わあああ!!!
すごい、ブランブル!ありがとう♪」
「とても似合っているぞユキ!」
ユキはとても満足気だ。
よかったな、ユキ!
「それでだな、パンテオンにもドラゴンの逆鱗を施したい。
すぐ終わるから、ここでパンツを脱いでくれんか、勇者さん。」
ええええ!!!
なんというセクハラ発言!
ブランブルがそう言うと、ユキは恥ずかしそうに俺を脱ぐ。
「ブランブル!こっち見ないで!」
「ああ、悪い悪い。」
ほんとに悪いと思ってんのかこいつ!
そして、ブランブルに脱ぎたてパンティが渡された。
そして、俺の4本の腕にドラゴンの逆鱗が縫い付けられた。
「よし、これでパンテオンの両腕にも逆鱗が付いた。
攻守ともに、パワーアップだ!」
ブランブルは俺を両手で持ち上げ、そう言った。
「ブランブル!早く返して!」
そうだ。この間、ユキはノーパンなのだ。
「そうだったな、ほれ。」
ブランブルは俺をユキに手渡す。
そして、ユキがそれを履いた。
こうして俺たちはドラゴンの逆鱗を身にまとい、さらなる高みへと昇ったのだ。
<作者あとがき>
次回、スライム討伐!
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