第20話 逆鱗に触れる

新たな作戦は始まった。


ルティアーノを変装させるための角としっぽは、メスのドラゴンから借りた。


というのも、ドラゴンの角としっぽは切ってもまた生えてくるので、あまり問題ではないらしいのだ。


そしてさらに、ルティアーノにはドラゴン風のメイクを施した。


こうして、ルティアーノの女装が完成した。


「ぷぷっ。ルティアーノ、かわいいじゃん。」


ユキが少し馬鹿にした感じで言う。


たしかにルティアーノの顔はそれなりにイケメンだし、女装映えもするなあ。


いつもうるさいルティアーノがきもちしおらしくなっていて面白い。


嫌々女装をさせられてちょっとテンション下がり気味だ。


「ははっ!悪くねえぞ、ルティ!」


ヴィエゴも面白がっている。


「はあ。なんで俺様がこんな目に・・・。」


仕方ないだろう。


俺&ユキとヴィエゴ、ルティアーノの3つの中でルティアーノが一番弱い。


必然的におとりはルティアーノだ。


おとりがそんなにいやなら、弱い自身を恨んでくれ。


すまんな、ルティアーノよ。


こうして、俺たちは無理やりルティアーノを引っ張ってオスのドラゴンの住処に向かった。


---


オスのドラゴンたちは俺たちのことを警戒し、住処の周りを巡回していた。


すると、見つかった!


「やつらだ!見つけたぞー!!!」


さあ、さっそくドラゴンさんのお出ましだ。


俺たちはドラゴンに女装したルティアーノを差し出す。


ドラゴンはそれに気付いたのか、動きが止まる。


「な、なぜ貴様ら人間がメスのドラゴンと一緒にいる!?」


俺は答える。


「いやあ、このメスドラゴンさん。

 イケてるオスをお探しのようでね。

 ここに連れてきちゃったんです!」


オスの目がハートマークになる。


「お、俺がオスのドラゴンの中で一番イケてるぜー!」


そう言うと、猛スピードでオスのドラゴンはルティアーノの前に降り立った。


そして、ルティアーノはドラゴンに背を向け、交尾の体勢をとる。


「さあ、オスドラゴンさん!

 交尾、いっちゃってー!」


俺はオスのドラゴンを煽る。


「メスを見繕ってくれるとはありがてえ!

 お前、仲間を殺したが、実はいいやつだったんだな!」


オスのドラゴン、なんてバカなんだ・・・。


オスがルティアーノの腰をやさしくつかみ、いざ交尾開始!


とその瞬間!


俺とユキはドラゴンの逆鱗に触れた!


「うぎゃあああああ!!!

 おめえら!逆鱗が目当てだったな!!!」


逆鱗に触れた瞬間、オスのドラゴンは突然暴れだした。


はがれかけの逆鱗。


あともう一息だというのに、ドラゴンが暴れてうまく力が入らない!


このままではまた振り出しだ!


大ピンチ!


その時だ!


ユキが力を振り絞り踏ん張った!


突然暴れだしたドラゴンに驚いた衝撃と、ユキが踏ん張った衝撃で、なんと、ユキはお漏らしした!


ユキ、実はトイレにしばらく行ってなかったのだ!


「やばっ。こんなときに///」


恥ずかしがるユキ。


しかし、そのお漏らしを俺はすべて吸収した!


パンティとしての仕事を全うしたからだろうか、俺に力がみなぎる!


オラオラオラァ!!!


俺は全力でドラゴンの逆鱗につかみかかり、逆鱗を引っぺがすことに成功した!


その途端、ドラゴンは去勢された犬のように急に落ち着いた。


「俺、何してんだ・・・。

 こんなメスには興味ない。

 よくみりゃブスだしな。」


「ムキーーーーー!!!

 誰がブスだってーーー!!!」


ルティアーノは怒った。


まあ、何はともあれとりあえず1匹は成功。


「しかし、よくあの状況で逆鱗を剥ぎ取ったものだ。

 さすがだな、パンテオン!」


ヴィエゴが俺を褒めてくれた。


「いやあ、ユキのお漏らしがなかったら危なかったよ。」


あ、ユキのお漏らしのこと言っちゃった・・・。


ユキの怒りの視線が俺の方向に向けられる。


「お、お漏らし?

 どういうことだ?」


ヴィエゴは突っかかってくる。


ユキはすかさず誤魔化す。


「コホン。何でもない!パンテ!余計なこと言わない!」


ごめんよユキ、つい口が滑ってな・・・。


「しかし、逆鱗に触れるとドラゴンは暴れだすんだなあ。

 一瞬で剥ぎ取らなければならんな。

 ってかヴィエゴ、あんた、ドラゴンが活性化する以前は逆鱗集めしてたんだろ?

 逆鱗に触れたら暴れることくらい、事前に教えてくれよ!」


「ああ、すまない。

 ただ、あそこまで暴れるのは初めてだ。知らなかった。

 きっと、魔王復活によるドラゴンの活性化が原因だろうな。」


そうなのか。


まあ、次からは一瞬で剥ぎ取るように気を付けよう。


そうして、ルティアーノおとり作戦はしばらく続いた。


ドラゴンたちは、仲間が逆鱗を剥ぎ取られるのには目もくれず、女装したルティアーノに次々に魅了され、そのすきを突かれては逆鱗を剥ぎ取られていった・・・。


日も暮れるころ、ようやくすべてのドラゴンの逆鱗を剥ぎ取り終わった。


「作戦終了!みんなお疲れさん!」


ヴィエゴが作戦終了を告げた。


大量の逆鱗が獲れた。


「しかし、こんな大量の逆鱗、俺は見たことないね!」


ドラゴンスレイヤーヴィエゴ様も驚きだ。


「もうドラゴンはこりごりだー!」


ルティアーノもお疲れ。


かくして俺たちはドラコ長老のもとへ報告に戻った。


「まさか本当に逆鱗を全部剥がすとはね!

 驚きだ!お礼と言っちゃなんだが、その逆鱗はすべてぬしらにあげるわい。」


やったね。これで一級品の武具が完成だ!


「最強装備、わくわく!」


ユキも新たな武具を楽しみにしている様子だ。



<作者あとがき>


次回、ユキの新装備!


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