第19話 ドラゴンの実力
俺たちは再びドラゴンの住処である崖に向かった。
すると、今度はドラゴンが1匹ではなく、複数の群れでやってきた。
やばいって、1匹殺したから、絶対怒ってるって!
「小さきものよ。
よくもさきほどは我が同胞を屠ってくれたな!」
ドラゴンの群れはユキとルティアーノを取り囲み、なにか溜める動作を始めた。
ルティアーノが叫ぶ。
「やばい、炎だ!
上に逃げろ!!!」
やっぱドラゴンって炎吐くのね!
俺は1本の腕でルティアーノをつかみ、3本の腕をバネにして、大ジャンプした。
ユキとルティアーノは宙に浮く。
そして、その直後、俺たちが先ほどまでいた地面目掛けて、ドラゴンたちが一斉に火炎放射をした。
ゴオオオオオオ!!!
やべえ、空中にまで火炎の熱が伝わってくる。
あれに直撃したらひとたまりもないな。
「人間は上だ!追え!
あの人間、背中から異形の腕が生えたぞ!気を付けろ!」
ドラゴンが俺たちに気付くと、一斉に羽ばたいた。
空中じゃ自由がきかない。
やばい。
ドラゴンの爪が目の前だ。
「ドラゴンクロー!!!」
ザシュッ!!!
俺は4本の腕でユキをガードするも、地面に向かって叩きつけられた。
ゴブリンキングの蹴り以上の威力。
俺もあれからレベルアップを繰り返したが、このドラゴンクローはそう何度も受けられない。
ユキにもダメージが及ぶ。
「ヒール!!!」
すると、ユキが回復呪文を唱えた!
「ユキ!いつの間にそんな呪文を!?」
「えへへ、私だってレベルアップしてる。
もう、守られるだけの私じゃないよ!」
そうか、さっきのドラゴンを倒したり、ユキだって成長している。
ユキと協力して倒すんだ!
「パンティパンチ!!!」
「回転式正拳突き!!!」
俺とユキはドラゴンに向かってパンチを放った。
しかし、効いていない!?
ちょっとうろこが傷ついただけ。
「ふん。大したことねえな。
こりゃあ、さっきのドラゴン殺しは運が良かっただけだな。」
ドラゴンはほくそ笑む。
たしかにさっきのドラゴンを殺せたのは、ドラゴン自身のアゴで舌を噛み切らせたからだ。
正々堂々と戦っては分が悪い。
残念だが、まだ俺たちのレベルでは奴らには勝てない・・・。
すると、ルティアーノが剣を構える。
「龍千切り!!!」
龍をも断つ剣技だ!
その剣技はドラゴンの硬いうろこに直撃!
ガギーン!!!
しかし、剣ははじかれた。
だが、ドラゴンの皮膚からは血が流れていた。
ドラゴンのうろこには打撃より剣撃のほうが通りは良いらしい。
ただ、どちらにせよ、所詮ドラゴンにとってはかすり傷。
大したダメージはない。
そして、ドラゴンたちは飛び上がり、一斉に滑空して俺たち目掛けて突進してきた!
「ドラゴンクロー!!!」
「ドラゴンクロー!!!」
「ドラゴンクロー!!!」
「ドラゴンクロー!!!」
「ドラゴンクロー!!!」
5匹のドラゴンの滑空ドラゴンクローだ。
絶体絶命・・・。
俺のパンティ人生もここまでか・・・。
そう思った瞬間!!!
ガギガギガギガギガギーーーーン!!!
複数の剣撃の音が!
「遅れてすまない、みんな無事か!」
誰だ、この男は!
30過ぎのワイルド系イケメンの剣士だ。
ルティアーノが目を輝かせる。
「ヴィ、ヴィエゴさーーーーん!!!」
そう、この男こそ、人類最強と名高い、ヴィエゴその人だった。
「お前たちがドラゴン退治に本気で向かったと鍛冶師ブランブルから聞いてな。
お前たちでは役不足と思い、はせ参じたワケだが・・・。
どうやら来て正解のようだな。」
ヒーローは遅れてやってくる。
なんてかっこいいんだこの男!
「ああ、ヴィエゴ!!!恩に着る!
初めまして、俺は伝説の武具、パンテオン!
よろしく頼む!」
「ああ。お前がパンテオンか!
よくぞ2人をここまで守り抜いた!」
ルティアーノは、親戚のお兄さんが遊びに来た時のガキみたいにはしゃいでいる。
「ヴィエゴさんが来れば安心だ!」
「しかしなルティ。
俺とて、活性化したドラゴン複数体とは五分だ。
負けはしないが、勝てもしない。
つまりな・・・ここは退散だ!!!」
やはりヴィエゴでも退散するしかないか。
俺たちの手に負える相手ではなかったのだ、ドラゴンは。
そうして、ヴィエゴの援護のもと、俺たちはドラゴンの群れから逃げ切った。
そして、ドラゴンの里、ドラコ長老のもとに戻った。
「おおヴィエゴまで来ておったか。
で、オスのドラゴンの鎮静化はどうじゃな?」
ヴィエゴが答える。
「ああ、ドラコさん。
やはり、無理だ。
申し訳ない・・・。」
「うーむ、このままでは、メスはオスに蹂躙されてしまうのお。」
ドラコもヴィエゴもうつむく。
俺が口をはさむ。
「正々堂々戦っては分が悪い。
なにかこう、奥の手みたいなのは無いかな?」
俺は、前世の世界であった、ヤマタノオロチ伝説を思い浮かべていた。
どうにも強いヤマタノオロチを、大好物の酒で酔わせて負かした、というおとぎ話だ。
そんな感じで、なにか弱点は無いものか、と俺は考えていた。
そして思いつく。
ヤマタノオロチにとっての弱点は大好物の酒だった。
では。
ドラゴンにとっての弱点は大好物の『メス』ではないか?と。
オスのドラゴンはいま、メスに目が無い。
つまり、メスを使ってオスをおびき出し、メロメロにしたところで逆鱗をぺりっと剝がしてしまえばよいのではないか?
しかし、本当にメスを使っては、彼女が犯されてしまう危険性がある。
偽物のメスを使うのだ。
そう、ルティアーノを女装させ、角としっぽを付けるのだ。
これでミッションコンプリート!のはず。
俺はこの案で提案してみた。
すると・・・。
「おいおいおい!!!
俺が危険すぎやしないか!?
それでは、俺が犯される可能性があるではないか!」
その言い分もごもっとも。
この作戦は、ルティアーノの尊い犠牲のもとに成り立つ。
ヴィエゴが言う。
「しかし、ルティが承諾すれば、この作戦はうまくいくだろうな!
まあ、もしもの時はルティは俺が守ってやるよ、安心しろ!
お前は最悪、目をつむっているだけでいいさ!」
まあ、たしかにそうだな。
ルティアーノはあくまでおとり。
一番危険なのは、逆鱗に触れる役だ。
それは、ユキと俺になる。
「さて、作戦も決まったことだ。
今日は準備して、明日にでも作戦を決行しよう!」
「そんなーーー、ヴィエゴさーーーーん・・・。」
ヴィエゴがそうまとめ、ルティアーノの反対意見はもみ消された。
<作者あとがき>
次回、女装ルティおとり作戦!
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