第16話 鍛冶屋ブランブル
俺とユキは数日間の休暇をもらった。
その間は身体がなまらないように多少の稽古はしたものの、しっかりと休んだ。
そして、俺たちは休暇中に装備品を買いそろえるという話になった。
「なあ、ユキ。
次の冒険に向けて、今度はしっかりと装備を整えていこう。
いくら簡単な調査任務だからと言って、戦闘が起こらないとも限らないだろ?」
「うん、そうね!」
でも、どの店に行くのがいいのだろう?
やっぱり勇者だし、最高の鍛冶師を見繕ってほしいよな。
「良い鍛冶師がいないか、王様に聞いてみようか。」
「うん!わくわく!」
そうして、俺たちは玉座の間に向かった。
「王様!実は、ユキは剣術ではなく、体術を磨くことにしたんだ。」
「おお、ルティアーノから聞いておるぞ。
方針が決まって何よりじゃわい。」
「それで、そろそろユキの武具を揃えたいんだが、おすすめの鍛冶職人はいないか?」
「ああ、それじゃったら王宮鍛冶師ブランブルを紹介しよう。」
王宮鍛冶師か。
ってことは、王様に雇われてる、王宮専属の鍛冶師ってことだよな。
「その、ブランブルってのはどこにいるんだ?」
「ああ。王宮内に鍛冶場があってな。
やつはそこに住み込みで働いとる。
その鍜治場に向かうといい。
ちなみに、やつは頑固で気難しいオヤジじゃ。
自分の意に反することじゃと、王であるわしの命令もたまに無視するからの。
心してかかるようにな。」
頑固でさらに気難しいときた。
俺が一番嫌いなタイプだ・・・。
前世の会社の上司にもそんなやついたよ。
そいつのせいで俺はうつ病になって、それがキッカケで引きこもりになったっけ。
今となってはいい思い出・・・・・・なわけねえだろ。
「サンキュー、王様!」
「ああ、いつでもなんでも聞いてくれたまえ。
協力は惜しまんぞよ。」
この世界の王様は勇者に優しすぎやしないか?
前世のどのゲームの王様も、なぜか勇者には容赦なかったぜ?
王国を救おうってのに1円も援助しねえし、衣食住だって全部自腹。
ゲームのそこら辺の設定、おかしいと思ってたんだよ。
パンティエッタ王がいかにまともな王様かがよくわかるぜ、元引きこもりゲーマーの俺にしてみればな。
さて、そんなこんなで俺たちは鍜治場に着いた。
「ブランブルはここか?」
カンっ!カンっ!
鍛冶ハンマーで鉄を叩いている初老の男の後ろ姿が見える。
カンっ!カンっ!
・・・。
・・・。
無視かよ。
さっそく気難しいぜ、このおっさん。
「おーい、ブランブルはいるのか?」
俺は再度問いただす。
カンっ!カンっ!
ようやく男は手を止め、口を開く。
「はあ、最近のガキは礼儀がなってねえな。
ブランブルなぞここにはおらん。
ブランブル『さん』ならここにおるがな。」
・・・。
ムキーーーーっ!!!
敬語にうるさいおっさんね、はいはい。
「ブランブルさんはいらっしゃいますかー?」
カンっ!カンっ!
「ああ、わしじゃが・・・。何の用だ。」
こいつはまだ俺たちの方向に振り返らない。
話をする時くらい、顔を合わせろ!
礼儀がなってないのはどっちだこのヤロウ!
「僕はパンテオンと申します。
伝説の武具をやっている者です。」
ユキも続く。
「わ、私はユキです。勇者です・・・。」
俺たちが自己紹介すると、ブランブルはようやく振り返った。
「ほう。これまた珍しい客人だ。
しかし、伝説の武具か。
ぜひとも一目見たいものだな。」
おいおい、このオヤジ。
わざとでないとはいえ、ものすんごいセクハラ発言だぞ。
『パンティ見せて』というセリフと同義だぜそりゃあ。
ユキが答える。
「伝説の武具は、私の・・・パ、パンティです!
なので、今は直接お見せできません!」
ユキは包み隠さず正直に言った。
「パ、パ、パ、パンティ!?」
ブランブルは拍子抜けした声で驚く。
「まあ、一部だが見せてあげますよ。」
俺はそう言うと、4本の腕を伸ばし、くねくねと動かして見せた。
「ほうほう。伝承の通りだな。
確かに言葉を解するし、伝説の武具のようだな。
ぜひとも今度はその姿、糸の1本まで見せてもらいたいものだな。」
おいおい、今度こそそれは確信的にセクハラ発言だぞ。
「は、はい。今度は脱いで来ます・・・。」
一部始終だけ見たらただの変態のパンティカツアゲオヤジだぞ。
「それで?既にお前さんには伝説の武具があるんだ。
わしに用は無いだろう?」
いやいや、大ありだよ。
パンティ以外、ろくな装備が無いんだから。
「いやあ、パンティ以外の装備が欲しいんです。
勇者のために特別な代物を頼みますよ。」
これは勇者と王からの頼みだ。
いくら頑固オヤジでも聞いてくれるだろう。
「ふん。ムリだな。」
一蹴された・・・。
なぜだ!
「おいおい、王様と勇者の頼みですよ?
言うこと聞かないと、罰が下りますよ?」
「ふん。言うことを聞かないのではない。
言うことを聞『け』ないのだ。」
ん?
なんだ?
さっきから言葉足らずなジジイだな。
「もっと詳しく教えてください。」
「まあ。不可能ではない。
だが、きわめて不可能に近い。
一級品を作る腕はあっても、材料が無いんだよ。」
なるほどな。そりゃ材料が無きゃ仕方ないな。
「じゃあ僕たちが取ってきます。
それでいいでしょう?」
「ふん。取れるもんならな。
王宮一の腕利き、ヴィエゴ将軍でさえ、その材料の採集は叶わなかったんだ。
無理だ、帰れ。」
無理だといわれただけであきらめるのも癪だ。
「ちなみに、その材料はなんですか?」
こいつら本気かよ、といった感じで、ブランブルは大きくため息をつく。
「ドラゴンの逆鱗だ。
それを加工すれば、一級品の武具ができよう。
だがな、魔物が活性化してからと言うもの、あやつに太刀打ちできる人間はもうこの世におらんだろうて。」
この世界、ドラゴンなんているの!?
そんなの、伝説級の魔物でしょ、絶対!
無理無理無理無理!
「わかった!やります!」
ええええ!!!
なんかユキさん、やる気なんですけど!?
<作者あとがき>
次回、ユキの新技!
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