第15話 休暇

俺とユキはゴブリン退治から帰ってすぐに稽古をしていた。


正直もうへとへとだ。


俺はパンティだからそんな疲れないけど、ユキは違う。


「あのさあ、俺たちちょっと休まないか?

 俺たちに同行したてのルティアーノには悪いが、俺たち疲れてるんだわ。

 ちょいと休暇をもらうよ。」


「まあ、別にいいんじゃないか?

 次の予定について王様も特に何も言っていなかったし。

 休暇の件は俺から王様に伝えておくよ。」


「ありがとう、ルティアーノ。」


こうして、俺たちは休暇を取ることになった。


「ねえ、パンテ!

 一緒にお風呂入らない?」


ええ!!


なにこの急なお誘い!


まあ、着替えの時にユキの裸は今までさんざん見てきたわけだけど、一緒にお風呂は入ったことないなあ。


なんだか、いつもと違う感じで新鮮で興奮しちゃうなあ。


じゅるり・・・。


おっと、前世の悪い癖だ。


でも、ユキはもはや娘みたいな感覚なんだよな。


うーん、でもちょっとはエッチな気持ちで見てしまう。


どう見るのが正解なんだろう??


そんなことを考えていると、ユキは俺を脱ぎ、部屋に備え付いているバスルームにおれを連れて行った。


「ゴシゴシゴーシ♪

 パンテ、きもちー?」


ユキは上機嫌に俺を洗ってくれている。


ユキの洗い方はただうまいだけじゃない。


優しさというか、愛情のようなものを感じるのだ。


ああ。


マッサージされているようで、夢見心地だ。


俺もユキの体中を洗ってあげる。


「あはは!パンテ、くすぐったーい!」


なんて楽しいひとときなんだろう。


このお風呂タイム、ずっと続いてほしい・・・。


「なあユキ、たまには俺も一緒にお風呂入れてくれよな!」


「うん!パンテって私のことエッチな目で見てないでしょ?だからいいよ!」


「ま、まあな。」


おっと、胸が痛い。


エッチな目で見ている割合は30パーセント、いや、40パーセントくらいあるからなあ。


俺とユキが仲良く入浴タイムを満喫していると、ガチャっと誰かが部屋にはいる音がした。


「おいユキ!部屋の鍵、閉めてないのか!?」


「やば!閉め忘れた!」


おいおい、誰だー?


勝手に部屋にはいったのはー。


男だったらしばきたおす!


「おーい、ユキー?

 いねえのかー?

 忘れ物のタオル持ってきたぞー!」


おいおいこの声、ルティアーノじゃねえかよ。


ルティアーノのラッキースケベ展開なんざ、だれも期待してねえんだよ!


「ルティアーノだ!

 お風呂のぞかれちゃうよ!」


ユキはあわあわしている。


すると、ルティアーノがバスルームのドアノブに手をかけた!


その瞬間、俺はドアの隙間から腕を通し、ルティアーノに手刀をくれてやった。


ドスッ!!!


すまんなルティアーノ。


俺のかわいいユキに近付く男は俺が排除する!


「あばっふ!!!」


ルティアーノは泡を吹いて倒れた。


かわいそうなルティアーノ。


俺はルティアーノの両まぶたをそっと優しく閉じ、ソファに寝かせた。


「もう、ルティアーノったら。

 ノックくらいしなさいよね。

 気絶させられて当然よ。」


ユキは両ほほを膨らませている。


さて、俺は4本の腕を伸ばし、キッチンを物色している。


さすがは特別待遇の勇者に用意された部屋だ。


色々な食材、色々な調味料、色々な食器が用意されている。


俺、こう見えて結構料理得意なんだぜ。


「なあユキ!カレーライス作ってやろうか?」


俺はカレーをスパイスからこだわる男だ。


そういう男は結婚できないって何かで聞いたことあるけど、あれは本当らしい。


俺は結婚はおろか、童貞すら捨てられなかったのだから。


「なあに、カレーライスって?」


そうか、この世界にカレーライスは存在しないらしい。


ということは、カレー粉もなけりゃ、チリパウダーとかコリアンダーとかもないワケ!?


こりゃ、この世界のスパイス選びから始めなきゃならんな。


腕が鳴るぜ!


俺はありとあらゆるスパイスを手に取り匂いを嗅ぐ。


って待て待て、俺ってば、鼻もなけりゃ口もねえ!


バカかよ俺、これじゃあ料理作れないじゃん!


俺は絶望した。


この世界に転生して2番目に絶望した。


1番目は何かって?


パンティで転生した瞬間さ。


なんだかんだで美少女に拾われてラッキーだったけどな。


ってそんなことは今はいい。


今はカレーが問題だ!


「あのさあ、ユキ?

 俺、味覚とか嗅覚ないのよ。

 だから、俺がスパイスを渡すから、その味の感想を伝えてほしいんだ。」


「うん!いいよ!わくわく!」


だいたい、ユキと視覚共有できるなら、味覚も共有してくれよな。


初期設定がテキトーなんだよ、神!


(うるさいなあ、黙りなさい。)


あ!


いま、うるさいって言った!


レベルアップするときのアナウンスの人、俺にうるさいって言ったよ!?


そんなこんなで、俺はユキに一通りのスパイスの味の感想を聞いた。


「ん、これは酸味と辛みがある!」


チリパウダーかな?


「んー、これはなんかおいしい。

 でも、何なんだろう、うまく伝えられないや!」


うーんそりゃそうなるわなあ。


まあ、これはコリアンダーってことにしよう。


まあこんな感じで、他にもいっぱい味見してもらった。


よし、スパイスも決まったし、まずはスパイスで鶏肉と野菜を炒める。


で、トマトっぽい野菜に水を入れて、炒めた物も全部ぶち込んで煮込む!


これで、トマトで煮込んだバターチキンカレーの完成だ!


見た目はいいんじゃない?


ちょっと黄色みがかったルウに、ゴロゴロ野菜がたっぷり!


「うわああああ、おいしそーーー!!!」


ユキはとてもうれしそうだ。


カレーの匂いにつられ、ルティアーノも起きる。


「なんだ!?このとてつもなく食欲をそそる匂いは!」


「起きたかルティアーノ。

 お前の分もあるから食べてみてくれ!」


こうして、ユキとルティアーノは俺の特製カレーを口に運んだ。


「うんみゃああああああ!!!」


2人とも目がキラキラ輝いてカレーを頬張る。


「パンテ、天才!」


「パンテオン、なんじゃこりゃあああ!!!」


2人とも、疲れをいやしてくれたようで良かったね。



<作者あとがき>


次回、ガンコ鍛冶師登場!


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