第14話 新たな戦術
ルティアーノがふいに言う。
「何度も言うが、お前、剣術は向いてないぞ。
やめたほうがいい。俺にはわかる。」
ユキはまた怒る。
「何度言うの!
でも、私の剣術、そんなに下手?」
「お前は下手だ。」
ルティアーノは大まじめにひどいことを言う。
「お前じゃない!ユキ!」
ユキは両ほほを膨らませて不機嫌になる。
「あ?ああ。ユ、ユキ!
ユキの剣術はなんというか、体術任せなんだ。」
ルティアーノは続ける。
「つまりな、ユキの体術自体はなかなかのものだったんだ。
正直言って人間技じゃあねえ。
俺は格闘術の訓練もしているからわかるんだ。
むしろ剣を持っていることで、剣がユキの体術の邪魔をしてしまっているとさえ思える。
ユキの一振りの威力はすごいさ、どんな腕力してんだ!?
俺じゃなきゃ受けきれないぜ。」
ユキは体術を褒められ、少し上機嫌になる。
となると、ユキの木刀を受け止めたティアノもなかなか強かったんだな。
「じゃあ私、格闘の訓練する!」
「格闘かあ。
それなら、俺が教えられるぞ!
パンティパンチ!!!ってな感じでな!」
「やったー!パンテが師匠で嬉しい!
ルティアーノが師匠の時はサイアクだったもん!」
お!俺が師匠のほうが嬉しいか!
まったく、ユキはかわいいなあ。
すると、ルティアーノが怒る。
「何がサイアクなもんか!
剣聖だぞ剣聖!稽古つけてもらっただけ感謝しろよー!」
「べーっだ!
私はパンテ師匠の弟子!」
ユキはルティアーノに向かってあっかんべをし、俺の腕に抱きついた。
なにこのかわいい生き物は。
とまあ、こいつら、仲直りしたようで良かった。
兄妹をあやす父親の気分だぜ、まったく・・・。
まあ俺、前世は子供いなかったし、なんなら童貞なんですけど!
くうう、今はパンティだし・・・俺、今世も童貞のまま死ぬの確定だぜ、ちくしょう!!!
パンティの俺に寿命があるのか知らんけど。
さて、ユキの戦術も決まったことだ訓練をしてみようじゃないか!
「ユキ!もう疲れてるかもしれんが、早速訓練してみよう!」
「う、うん!やる!」
ユキはルティアーノとの剣術稽古ですでに疲れているが、自身の新たな可能性に胸を躍らせている。
「では、ゆくぞ!」
俺は、まずは2本の腕でユキに向かってパンチを繰り出した。
バシバシっ!
バシバシっ!
ユキは俺のパンチを腕でガードする。
「けっこう強い力で殴ったんだが、痛くないか?」
「うん!平気!
パンテを履いてるから、パンテの加護で痛くない!」
なるほど!
俺を履くことによって、ユキは身体能力が大幅に強化されているんだ。
つまり、ユキに剣など必要ないのだ!
ユキは軽やかな足さばきでステップを踏み、華麗にパンチを繰り出す。
あまりに高速のそのパンチは、まるでプロボクサーのようだ。
しかも、そのパンチの威力はすさまじい。
ユキのパンチ、俺のパンティパンチと同等の威力があるんじゃねえか?
俺は今までそれに気付いてやれなかった。
ユキを大事に思うがあまり、ユキに何もさせてやれてなかった。
今後はユキにも頼り、お互いに助け合う関係を築いていこう。
すると、今度はユキが高速キックをしてきた!
ブンッ!!!
俺は1本の腕で受け止めた。
と思ったが、受け止めきれなかった!
なんて威力だ!
こりゃあ、ゴブリンキングのパンチに匹敵する威力じゃねえか!?。
「ユキ!もう一度キックを入れてくれ!
今度は腕2本で受けてみる!」
試してみるか!
「うん!」
ブンッ!!!
「うぐっ!」
俺は2本の腕で受け止めようとしたが、やはり受け止めきれなかった。
「次は3本!」
ブンッ!!!
バシッ!!!
やっと、腕3本でユキのキックを受け止めた。
こりゃあすごい。
ユキのキックは、ゴブリンキングのパンチと同等かそれ以上だ。
ゴブリンキング戦、ユキにも戦ってもらえば絶対にもっと楽だった・・・。
不覚だ。
後悔しても遅いが、そうすればティアノだって救えたかもしれんというのに。
「すごいじゃないか!ユキ!
俺が手も足も出なかったパンテオンにここまで迫るとは!
しかし、俺よりも強いかもしれんのは気に入らん!!!」
まったく、どんだけ負けず嫌いなんだか・・・。
「えへへ。」
ユキはすごくうれしそうだ。
よかったね、機嫌治って。
「でも、剣を使う魔物が出たらどうする?
さすがに素手では分が悪いぞ。」
ナイス指摘だ、ルティアーノ。
たしかに、ゴブリン相手なら素手でも戦える。
でも、剣や魔法を使ってくる上級の魔物には素手ではさすがにまずい。
俺の加護があるとはいえな。
なにか装備が必要だろう。
明日は装備品を買い集めようじゃないか!
ユキの服も、単なる貴族服じゃあ戦闘に不向きだしな。
こうして、俺たちはユキの戦闘術を確立した。
そして、装備集めに向かうのであった。
だがその前に、ちょっと休暇を取ろう。
<作者あとがき>
次回、休息回!
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