第13話 剣の指南
ここは医務室。
少ししてルティアーノは目を覚ました。
「はっ!俺はいったい!?」
ルティアーノは目を覚ますと、自身の曖昧な記憶をたどる。
「そうだ!俺は勇者に返り討ちにされたんだ!」
俺はルティアーノに声をかける。
「お目覚めかな、ルティアーノ。」
「貴様!」
ルティアーノはこぶしを握り、自身の弱さを悔いている様子だ。
「お前は剣聖なのかもしれんが、俺には勝てなかったな。
まあ、俺が強すぎただけのこと。
あまり気負うなよ。」
俺は少し煽りつつ、ルティアーノを慰めてやった。
「ちくしょう!
俺が負けたのは久々だ!
くそっくそっくそーーー!」
すると、ルティアーノの隣のベッドから声がした。
「ルティアーノ、あまり勇者様の前で粗相をするでない。
親である私が恥ずかしいわ、このバカ息子!」
ティアノだ。
息子が勇者ユキに戦闘を吹っ掛けたことが恥ずかしくてたまらない様子。
「親父!
お、親父は悔しくないのかよ!
自分よりもうんと強いやつが現れて!」
ルティアーノは父親に質問を投げかけた。
「ああ、悔しいよ。
でもな、お前の悔しさとは違う。
人より弱いから悔しいんじゃない。
俺が勇者様くらい強ければ、俺も国民を、世界を救えたのにって思うと、自分の弱さが悔しいんだ。
お前にはこの気持ち、まだわからんかもな・・・。」
ティアノは本当に義理人情に厚い漢だ。
俺もわかるぞ、その気持ち。
「わっかんねえよ、親父・・・。」
この父親にして、なぜこの息子なのだろう・・・。
はなはだ疑問である。
「さて、お前はもうケガ、治っただろう。
勇者様の指南役、頑張れ。
勇者様、こんな愚息ですが、なにとぞよろしくお願いします。」
「いえいえ。こちらこそ、よろしくお願いします!」
そうして、俺とユキとルティアーノは剣の稽古をするため、道場へ向かった。
2人は木刀を持つと、まず、ルティアーノが口を開いた。
「まず言っておく。
お前、剣の才能ねえよ。」
な!
俺のかわいいユキになんてことを、このガキ!
ユキは静かに怒っている。
「う、うるさい!
私は勇者!強いの!」
ユキはそう自分に言い聞かせ、ルティアーノに斬りかかる。
バシッ!!!
しかし、ルティアーノはいとも簡単にユキの木刀を弾き飛ばした。
「な?言っただろ?
何度かかってきたって同じさ。」
ユキは剣を拾い、また斬りかかる。
そして、またはじかれ、拾い、斬りかかる・・・。
これを何度繰り返しただろう。
ユキも意地になっている。
1時間は経った。
2人とも息も絶え絶えだ。
「お、おまえ、いい加減に気付け。
本当はもう気付いているんだろ?
自分に剣の才能は無いって。」
「でも・・・私・・・ティアノさんに勝ったもん・・・!」
そ、そうだ!ユキはティアノに勝った、将軍に勝ったんだ!
しかし、ルティアーノはそれを鼻で笑う。
「ふっ!親父はもう歳だし、そもそもそんな武闘派でもない。
親父はな、雑魚なんだよ!
雑魚に勝ったくらいで調子に乗るんじゃねえ!」
なんてひどいことを言う!
俺の盟友ティアノを侮辱するとは許せん!
ルティアーノは続ける。
「親父は雑魚だ!
雑魚雑魚雑魚雑魚!!!
雑魚だからあんな傷だらけになっちまったんだよ!」
ルティアーノ・・・泣いてる・・・。
きっと、親父さんが引退したのが悔しくて、寂しくて、悲しくて、やりきれないんだ。
その怒りをどうしようもできないでいるのだ。
そうか。
今のこいつには温もりが必要なんだ。
俺は、4本の腕でそっとルティアーノを抱きしめてやった。
「泣くな・・・男だろ?」
「うるせえ!泣いてなんか・・・ねえ・・・!」
俺の腕はパンティの装飾だ。
柔軟剤のいい香りがルティアーノを包む・・・。
「ってお前!
パンティで俺を抱きしめるんじゃねえ!
この破廉恥勇者!!!」
またこいつはひどいことを・・・まったくかわいくないねえ・・・。
おいユキ。
こいつ、ぶっ叩いていいぞ。
ってあれ、ユキさーん?
「ぐすん、ひっく・・・。」
え、えええええ!!??
ユキも泣いてるんですけど!?
なになに、もらい泣き!?
「なんで・・・お前まで・・・泣いてんだよ!!!」
ルティアーノが叫ぶ。
「だって、私・・・お父さんとお母さん、失くしてるから・・・。
お父さんとお母さんを思い出しちゃって・・・。
別に・・・あんたで感動したワケじゃ・・・ないんだから・・・!」
ユキも両親を亡くして辛かったんだ。
それを思い出しちゃったんだね。
「ちぇっ、調子狂うぜ・・・。」
「ほら、お2人さん、仲直りだ!」
よくわからんが、仲直りのタイミングな気がする。
流れで握手をさせてしまえ。
俺は2人の手をとり、握手させた。
ちょっと無理やりな仲直りだけど。
まあ、しないよりはいいよね?
こうして、2人は一時休戦となった。
<作者あとがき>
次回、ユキの新たな戦術開発!
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