第8話 ゴブリンキングの居場所

俺たちはゴブリンキングのもとへ向かった。


しかし、森の中は木々で入り組んでいて、どこがどこだかわからなくなる。


まるで迷宮だ。


そこで、俺たちは情報が集まる酒場に行くことにした。


外から中の様子をうかがうと、かなりにぎわっている様子。


酒場の扉を開けた。


ぎぃぃー


扉を開けると、人間がよほど珍しいのだろう、酒場の中は時が止まったようにピタッと会話が止まった。


すると、1体の顔と体が傷だらけの、いかにもボス風のホブゴブリンが近づいてきた。


「なんだあ、おめえら。

 人間が何の用だ?

 ケンカを売りに来たってんなら、俺が受けて立つ。表に出な!」


ティアノが慌ててホブゴブリンを落ち着かせる。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。

 俺たちはゴブリンキングに話をしに来ただけなんだ。

 君たちに危害を加えるつもりはない。」


ホブゴブリンは疑り深くティアノとユキを眺める。


「ふん、まあいい。

 信用したわけじゃねえ。

 ただな、こんな嬢ちゃんとおっさんの2人に何かできるわけでもなさそうだしな。

 こんな弱そうな連中、ほかっといてもいいなと思っただけさ。

 なあ、そうだろう?野郎ども!!!」


すると、手下のゴブリンたちが笑う。


「ぎゃっはっはっはっは!!!」


なんとも腹立たしい連中だ。


まあ無理もない。


俺という、伝説の武具がこいつらには見えていないのだからな。


ティアノが恐る恐る問いただす。


「で、ゴブリンキングの居場所は教えてくれるのかな?」


「まあいいぜ。

 ゴブリンキング様の居場所を教えたところで、お前らにどうこうできるわけでもないしな。」


ティアノはホブゴブリンの挑発に対するイライラをぐっとこらえ、受け流す。


「そりゃどうも。」


「この通りを真っすぐ。

 で、突き当りを右に行けばわかるさ。

 くっくっく・・・。」


案外とあっさり教えてくれたもんだ。


さて、こんな治安の悪そうな酒場はとっととおさらばしよう。


俺たちはさっきのホブゴブリンの言う通りの道を行った。


突き当りを右に曲がると、なんとも辛気臭い通りに出た。


酔いつぶれたゴブリンや薬物中毒らしきゴブリンがそこかしこにいるではないか。


ここは絶対にやばい通りだ、本能でわかる。


俺たちはその通りに入ると、ゴブリンたちは一斉にユキに視線を注いだ。


「ぎゃぎゃああああ!!!!」


ユキは猛ダッシュで逃げる!


「なんで追っかけてくんのよー!」


ゴブリンどもはティアノには見向きもしない。


よく見ると、ゴブリンの陰部がおっ勃っているではないか・・・!


こいつら、ユキを見て発情していやがる!!!


俺は、俺のかわいいユキを変な目で見るやからを許さない。


「パンティパンチ!!!」


俺はゴブリンたちに岩をも砕くパンチをお見舞いした。


ゴブリンたちは脳震盪を起こし、ノックダウン。


一応、殺しはしていないが、重症だろう。


ゴブリンの顔面は血まみれだ。


「ユキ!大丈夫か!?」


「うん!ありがとう、パンテ!」


「さ、さすがはパンテオン様!

 私は護衛として何もできず・・・面目ない!」


ティアノは本当に役に立たない。


こいつはいざというとき何もしないのだ。


はてさて、さっきのホブゴブリンの言う通りにしたら、ろくなことにならなかった。


さてはあいつ、俺たちをはめやがったな!?


俺たちを治安の悪い地域にわざと案内したんだ!


くそーーー!


思い出すだけで腹が立ってくる。


すると、1匹の貧相なホブゴブリンがやってきた。


「お前さんたち、何の用だい?」


「私たち、ゴブリンキングの居場所を探しているの。

 酒場ではここを案内されたのだけれど・・・。」


「ふっふっふ。そりゃああんたら、騙されてるね。

 ただでなにかものを教えるわけがないだろうて。」


言われてみれば、そりゃあ確かにそうだな・・・。


ホブゴブリンは続ける。


「ここの通りは最低の治安だ。

 あんたみたいなお嬢ちゃんが通れば、何度犯されるかわからないってものよ。」


ユキはふくれ顔をする。


「それで、何を差し出せばゴブリンキングの居場所を教えてくれるの?」


「そうだな。

 お前さんを犯させてもらうか、食べ物をよこすかのどちらかだな。」


ユキは軽蔑の目でホブゴブリンを見つめる。


そんなの、食べ物を差し出すに決まっているだろう!


ユキをこんな汚らしいゴブリンに差し出すはずがない!


「ティアノ!

 昨日のイノシシの肉を燻製にして保存しただろう?

 それをくれてやれ!」


ティアノは馬車にイノシシ肉を取りに行った。


「ふっふっふ。お嬢ちゃんのほうが嬉しかったが、まあいいとしよう。

 俺は情報屋だ。イノシシ肉が届き次第、ゴブリンキング様の居場所を教えてやるよ。

 それにしても、ゴブリンキング様に会うなんて、命知らずだねえ。

 俺らホブゴブリンですら恐れているというのに。」


「ど、どういうこと?」


「ああ。ゴブリンキング様は気性が荒くてね。

 イライラしてる日なんかは、気分で周りのゴブリンを殺しちまうんだ。

 お前さんらも気を付けることだな。」


そうこうしていると、ティアノがイノシシ肉を持って来た。


「お待たせしました勇者様。

 ほら、これがイノシシ肉だ。」


「おうおう、おいしそうな肉だね。

 ありがたくもらうよ。」


ホブゴブリンはイノシシ肉を受け取った。


ホブゴブリンは続ける。


「それにしても、勇者様?

 お嬢ちゃんが勇者かい!?」


「ええ、そうよ。」


「こりゃあ恐れ入った!

 どおりでそこらのゴブリンなんか簡単に蹴散らすわけだ!

 これは、ゴブリンキング様の居場所は教えないほうが・・・。」


「おっと、イノシシ肉はたしかにあげたんだ。

 答えてもらわなきゃ、勇者様が黙っちゃいないぜ!」


ティアノがすかさず言った。


「そ、そうよ!」


ユキもそれに便乗した。


「ひっひいいいい!

 わ、わかった、教えるよ。

 俺は情報屋だしな、契約は契約だ。

 ゴブリンキング様はこの都市のど真ん中。

 つまり、ここを東だな。

 ひときわ大きいツリーハウスにいらっしゃる。

 気性の荒いお方だ、気を付けろよ。

 まあ、勇者なら問題ないかもしれんがな。」


都市の真ん中か。


とりあえず東に進んでみるしかないな。


「教えてくれてありがとう、感謝する!」


俺は礼を言った。


「はて、お嬢ちゃんの股間から声が・・・?」


こうして、俺たちはゴブリンキングの居城へと向かった。



<作者あとがき>


次回、ユキ、絶体絶命!?


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