第7話 ゴブリン都市
俺たちは東の森に入り、ゴブリン都市へ向かっていた。
「私も戦いたい!
だって、いっつもパンテに助けられてばかりなんだもの!」
「ユキはそのままでもいいんだぞ?
でも確かに、さらなる強敵が現れたら、ユキにも戦ってもらわないと勝てないかもな。」
それだけじゃない。
俺がユキを守り切れなかった場合、ユキが強くなければやられてしまう。
このままではいけないのはなんとなく理解はしていた。
しかし、この時の俺はわかっている気になっているだけだった。
さて、ゴブリン都市らしき場所が見えた。
森の木々にいくつもの橋が渡され、それぞれにツリーハウスがある。
そこには一つの大きなコミュニティが形成されていた。
確かに、『都市』というだけある。
「ゴブリンはこんな器用にツリーハウスや橋を作れるはずがない。
いったい、ゴブリンはどこまで強くなっているんだ・・・。」
ティアノはツリーハウスを見て唖然としている。
これもゴブリンキング誕生、ひいては魔王誕生の影響なのだろう。
ゴブリンキングに会って、魔王についてや、人間と敵対する可能性があるのかについて色々調査したいところだが、今日はもう遅い。
宿を探さねばならん。
このゴブリン都市にも宿屋はあるものの、人間を泊めてくれるようなところはないだろう。
快く泊めてくれても、この前のホブゴブリンのようにだましてくる可能性が高い。
結局、俺たちは野宿することにした。
俺たちはゴブリン都市から少し離れたところにテントを張った。
今すぐにユキを休ませ寝かせてやりたいところだが、その前に腹ごしらえだ。
俺は木の棒の先端を削り、モリを作った。
そして、ユキに手渡す。
「ユキ!強くなりたいんだろう?
なら、この武器で獲物を獲ってみろ!」
そう。これはトレーニングだ。
ユキには少しでも強くなってほしい。
俺がユキを守り切れなかった、もしもの時のために・・・。
「わかったよ、パンテ!」
俺とユキはしばらく獲物を探すと、イノシシが現れた!
イノシシはユキに向かって突進する。
ユキはそれを華麗なステップでかわし、イノシシの横から喉元目掛けてモリを突き刺した!
すると、その太刀筋は光を放ち、イノシシの首を切り落とした。
「ブギーーーー!」
イノシシは倒れた。
「え、私、強くなってる!
きっと、伝説のパンティのパンテを身に付けているおかげだよ!」
たしかに、ただの少女の身のこなしではないし、ただの木のモリの切れ味ではなかった。
俺を身に付けているおかげで、ユキの身体能力及び他の装備が強くなるらしい。
これは思わぬ発見だった。
『ユキを守る』という発想はおこがましかったのかもしれない。
ユキはもう十分強かったのだ。
俺はそう思った。
そうして、俺たちは仕留めたイノシシでイノシシ鍋を作り、3人で食べた。
その後、ユキは自分が強くなっていたことがよほどうれしかったのか、稽古をしようと言い出した。
「ティアノさん!私に剣の稽古をつけてみてほしいの!」
「おお、わたしで良ければいいですとも。
ちょうど、馬車の中に訓練用の木刀も2本ありますぞ。」
そうして2人は木刀で稽古を始めた。
「ていー、やーーー!!!」
結果は五分五分、いや、ユキのほうが若干押している。
しばらく稽古を続けると、ティアノが口を開いた。
「参りましたぞ。
このままではジリ貧。
私のスタミナが切れて負けてしまうでしょうな。」
ティアノが降参した。
「すごいぞユキ!
将軍相手に押している!」
「えへへ、私、結構強いかも!」
「さすがは勇者様。
きっと、これからもっともっとお強くなって、私なぞ足元にも及ばなくなるでしょうな!
わっはっはっは!」
ユキがこんなに強いなら、俺、要らなくね?
そんな気さえしてきた。
そんなこんなで、俺たちは就寝した。
夜中にユキの柔肌に飛んでくる蚊を一匹残らず退治したのは褒めてほしいものだ。
誰も知る由もないが・・・。
なお、ティアノに飛んでくる蚊は無視して退治していないので、ティアノはブチブチに刺されていることだろう・・・。
翌朝・・・。
「うーーー、痒くて痒くてしかたないですな、勇者様。」
「そう?私、全然刺されなかったわ!
ティアノさんの血液型、O型なんじゃない?」
「たしかにそうですが・・・。
1か所も刺されないとは、さすがは勇者様。
これも、勇者の加護なのでしょうな!
わっはっはっは。」
まあ、俺が蚊を退治してたんだから、ある意味は勇者の加護だな・・・。
<作者あとがき>
次回、またしてもゴブリンのウソにハマる!?
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