第5話 ゴブリン村
俺とユキはティアノに連れられ、3人でゴブリン村に来ていた。
「ティアノさん、私、ゴブリンについてよく知らないんだけど、教えてもらえる?」
俺もよくは知らない。
転生したての頃、荒野で一匹のゴブリンに出会ったくらいのものだ。
ゴブリンに関する知識などほとんど持ち合わせていない。
「ああ、いいですとも。
ゴブリンは知能は高いですが、最も低位の魔物の一つです。
縄張り意識が強いため、こちらが危害を加えずとも、縄張りにはいれば近づくだけで襲ってきます。
本来ならば、1人の兵士で1匹のゴブリンを相手できますが、魔物が活性化した今、3人がかりでないと厳しいでしょうな。」
ティアノが説明してくれた。
ゴブリンはけっこう危なっかしい連中ということはよくわかった。
そうこうしていると、ゴブリン村に着いた。
周りは木でできた柵でおおわれている。
この柵の内側がゴブリンの縄張りなのだろう。
俺たちはさっそく、見張りのゴブリンに見つかる。
「ぎゃぎゃ、ぎゅぎゅぎゅううう!!!」
何言ってるのかわからん・・・。
しばらくすると、門が開いた。
普通のゴブリンよりもひときわ大きいゴブリンが出てきた。
こいつがゴブリンキングか!?
「ホブゴブリンですな。
村の長と見えます。」
ティアノがそう言うと、ホブゴブリンが声を発した。
「ん?なんだお前ら?
道に迷ったのか?」
ホブゴブリンは言葉を話せるらしい。
これなら話は早いな。
ちなみに、ホブゴブリンはゴブリンよりも明らかに体がデカい。
ティアノが答える。
「いえ、ゴブリンキングが出現したのではないか、調査に来ましてね。」
「ゴブリンキングだあ?
そんな大そうな者はいねえよ。
それよりも酒だ、酒を持ってこーい!
こんな人間の客人は久々だ!
今日は宴だー!」
ホブゴブリンは村のゴブリンにそう呼びかけた。
え?うたげ?どういうことだ?
ゴブリンって気性が荒いんじゃないの??
むしろ人間に友好的じゃん。
ティアノも首をかしげるが、少し嬉しそうだ。
「私、お酒、飲めない・・・。」
ユキはまだ未成年だ。
飲酒は禁止だ。
「んあ?
酒が飲めない?
人間のルールか?
しゃあねえ、おめえは水で乾杯だ!」
そうして、俺たちはゴブリン村の中に案内された。
村は集落のようになっていた。
造りは簡単だが、しっかりとした家々が並ぶ。
そうこうしていると、酒や食べ物が運ばれてきて、俺たちはゴブリンたちの真ん中に座らされた。
そして、ホブゴブリンが口を開く。
「人間たちとの友好の証にかんぱーーーーい!!!」
「うっほーい、うまそうですね、勇者様、パンテオン様!」
ティアノは上機嫌だ。
「わあ、イノシシの丸焼きなんて、豪華だあ!」
ユキも楽しそう。
「さあさ、どんどん飲んで食ってくれ!」
ホブゴブリンも楽しそう。
しかし、俺は嫌な予感がしている。
だって、ゴブリンって気性が荒いんだろ?
話が違うじゃないか・・・。
「なあユキ!
このゴブリンたち、怪しくないか?」
俺はユキに問いかける。
しかし。
「えー、ゴブリンさんたち、優しいよお?」
ユキは聞く耳を持ってくれない。
もどかしく、時間だけが過ぎていく。
すると。
「うえーーー!にっがーーーーい!!!」
ユキが叫んだ。
「おっとわりい。
嬢ちゃんは酒はダメだったな。
でも、誰も悪く言わねえ、飲んじまえ飲んじまえ!」
ユキは言われるがまま、酒をぐいっと飲んだ。
そして、酔いつぶれてしまった。
ティアノも潰れている。
いよいよ嫌な予感がするぜ・・・。
2人が酔いつぶれたのを確認すると、ホブゴブリンがゴブリンたちに話しかける。
「バカな人間どもめ。
ゴブリンキング様の居場所なんか教えるわけがないだろう。
くっくっく・・・。
さて、男は殺して食う。
女は犯して孕ませる。
だよな?野郎ども!」
「うぎゃぎゃ!!」
なんて野蛮なやつらだ!
ホブゴブリンが号令を放つ。
「やっちまえーーーー!!!」
ゴブリンたちはそれに反応する。
「うぎゃあああ!!!」
そして、ユキに襲い掛かった!
「お前ら、いい加減にしろーーーー!!!」
俺は1本の腕でユキを覆って守り、もう1本の腕でゴブリンたちを蹴散らした。
「うぎゃぎゃぎゃぎゃああああ!!!」
ゴブリンたちは気絶した。
「なんだ、この化け物は!?」
俺の腕を見て、ホブゴブリンが驚く。
こいつにはいろいろと聞きたいことがある。
生け捕りだ。
俺は新技・連続パンティパンチ(2本の腕を使った連続パンチ)をお見舞いした!
ドカドカドカドカ、ドカーーーーン!!!
「うがあああああ!!!!」
ホブゴブリンはノックアウト。
俺は近くにあった縄でゴブリンたちを縛り上げた。
翌朝・・・。
「むにゃむにゃ・・・。
って、ゴブリンさんたちが縛られている!?
どういうことでしょうか!?」
ティアノが目を覚ます。
それにつられ、ユキも目を覚ました。
「んん・・・?
って、ゴブリンさんたち!?
どうして!?」
まったく、おめでたいやつらだ。
昨晩に俺が必死で片づけた悪党どもを『ゴブリンさん』などとさん付けで呼んでいる。
「あのなあ、お前ら。
酔いつぶれている間に襲われそうになっていたんだぞ!
俺が懲らしめたからよかったのもを・・・。」
「えええ!!!
パンテが助けてくれたの!!!
ありがとう!!」
「パンテオン様、さすがでございます!
しかし、ゴブリンたちの罠にまんまとハマってしまうとは、将軍失格にございます・・・。」
「私も勇者失格だわ・・・。
パンテの忠告、ちゃんと聞いていればよかった。」
「まったく2人とも、反省してくれよな!」
こうして、俺たちは難を逃れたのだった。
<作者あとがき>
次回、ホブゴブリン尋問 & 拷問!
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