EITOエンジェル総子の憂鬱（仮）57

忠臣

　＝＝＝＝＝　この物語はあくまでもフィクションです　＝＝＝＝＝＝＝＝＝

　==============　主な登場人物　================

　南部（江角）総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

　南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。

　大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。

　足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

　石動悦子・・・　EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

　宇野真知子・・・　EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

　丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。

　河合真美・・・　EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

　北美智子・・・　EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。現在は休暇中。

　久留米ぎん　・・・　EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。

　小峠稽古　・・・　EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

　和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック７のメンバー。

　中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック７のメンバー。

　海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック７のメンバー。

　来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック７の総長。EITOエンジェルス班長。

　愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。

　本郷弥生・・・EITO大阪支部、後方支援メンバー。

　大前（白井）紀子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。ある事件で総子と再会、EITOに就職した。

　神代チエ・・・京都府警の警視。京都府警からのEITO出向。『暴れん坊小町』の異名を持つが、総子には、忠誠を誓った。

　芦屋一美（ひとみ）警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。アパートに住んでいる。

　用賀（芦屋）二美（ふたみ）二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。オスプレイやホバーバイクを運転することもある。後方支援メンバー。総子の上の階に住んでいたが、用賀と結婚して転居した。

　芦屋三美（みつみ）・・・芦屋グループ総帥。EITO大株主。芦屋三姉妹の長女で、総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。芦屋三姉妹と総子は昔。ご近所さんだった。

　小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。

　真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。

　佐々一郎・・・元曽根崎署刑事。横山と同期。大阪府警テロ対策室勤務。通称佐々ヤン

　指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。

　用賀哲夫空自二曹・・・空自のパイロット。EITO大阪支部への出向が決まった。二美の元カレだったが、二美と結婚した。

　下谷葉子・下谷愛子・・・予備校経営者。境遇が似ているせいか、芦屋姉妹と親しい。

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　=　EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す　＝

　==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==

　※ヘラとは、ギリシャ神話で、オリンポスの最高女神。 クロノスとレアとの娘で、ゼウスの姉にして妻。 女性の結婚生活を守る神とされ、 嫉妬 しっと 深く、夫の愛人やその子を迫害したと言われる。

　午後7時。大阪市東住吉区杭全。ヘラ杭全（くまた）第一予備校。

　授業が始まるや否や、講師に躍りかかる受講生。

　ナイフだ。回りの者が必死に抑え込んだ。

　同じ頃。午後7時。大阪市鶴見区放出東。ヘラ放出（はなてん）予備校。

　ここでも、授業が始まると、講師に躍りかかり、ナイフで講師に怪我をさせる受講生がいた。

　翌日。午前9時。EITO大阪支部。会議室。

　マルチディスプレイに小柳警視正が映った。

「既にニュースで伝えられているので、知っている者も多いと思うが、ヘラの予備校2校で講師が刺されるという事件があった。講師がどちらも軽傷だが、襲った受講生が『統合失調症』だ。『幻覚』と『妄想』が現れる病気だ。襲われた予備校が同じ系列、襲われた時間や状況が酷似。裏に何かありそうだし、模倣犯または類似事件の発生が予期される。そこで、EITOに要請が来た。警察ではなく、経営者からだ。」

「経営者？ヘラさんですか？警視正。」と、総子は尋ねた。

「ははは。よく誤解されると言っていた。外人さんじゃないよ、チーフ。経営者は、下谷葉子、愛子の双子の姉妹だ。両親が教育者だったことの影響を受けた。ヘラと言うのは、幼少期のあだ名だそうだが、ギリシャ神話に出てくる『ヘラ』という『嫉妬の神様、おんなの神様』から解釈して、自分達はお互いに『切磋琢磨』するライバルでいようという意味で、学校の名前に付けたそうだ。」

「詰まり、黒幕を突き詰めることと再犯防止ですね、警視正。」と、大前は言った。

「統合失調症って、まさか同じ医師にかかっているとか。」と、二美が発言した。

「うん。そこまでは判明している。家族の協力でな。ところが、その医師は行方不明だ。今、南部興信所に、予備校の業界を当たって貰っている。学校経営が関係しているっかも知れないからな。何せ、コロニーの頃も、オンライン授業などを積極的に取り入れて流行っていた予備校だ。一方で廃校にした経営者もいるのに、だ。下谷姉妹は、業界のガセで脅かされていたことがあったらしい。」

「ガセ？」「天下り役人がいるから、父さんを免れた、とかだな。無論、そんな事実はない。政治家とのパイプは無いんだ。ただ、日教連の教育方針とかにもの申しているから、敵は少なくない。」

「成程。取り敢えず、受講生の評判と、姉妹周辺の人間関係ですね。」

「うん。また、探偵もどきになってしまったが、受講生の使ったナイフだが、ナイフガンナイフと形状と似ている。ネットで広まったから、形状を真似て作ったイミテーションを入手したのかも知れないが。ああ、両者のPCは押収している。誰かに利用された可能性もあるからな。」

「アルフィーズですか。まだいたのかな？じゃ、ChotGPTかな、講師は簡単に襲える、とか。了解しました。手分けして当たります。」

　画面から小柳が消えると、また小町が、アカンベエをしていた。

　いずれ、問いただすべきだろうが、大前は事件解決を優先した。

　午前10時。兵庫県尼崎市大物（だいぶつ）町。

　西淀川区に接しているが、兵庫県である。兵庫県と言えば、西宮や三宮が有名で、尼崎が大阪府と勘違いする人も多い。

　工場が多い地区だが、ヘラ自社ビルは、意外にもこじんまりした3階建てビルだった。

　社長、複社長の下谷葉子は、大前達を笑顔で迎えた。

「ヘラという名前を頭に乗せたので、仲が悪い姉妹だと思われたでしょう？美人の、若い奥さんをお持ちの大前さん。」

「あ。どうしてそれを？」「芦屋三姉妹とは長いお付き合いですの。三美さんに言われて注意していたんですが、ウチの株を買い占めようとしている那珂国人がいるんです。そして、合併を持ち出した。」

「聞いたことがあります。あらゆる産業を傘下に収め、支配しようとしている動きがある、と。以前、蒲鉾屋の事件で芦屋三美総帥に話を聞きました。じゃあ、予備校が乗っ取られようとしている、と。」と、大前は感心した。

　午前10時。ヘラ杭全（くまた）第一予備校。

　校長でもある、下谷愛子は、事件のあらましを説明した。

「来年の受験に向けて、夏期講習から熱心に勉強しに来ていた受講生でした。私は、直接会ったこともなかったけど、教われた講師から聞きました。質問に来たかと思ったら、いきなり切りつけられた、とか。ご両親の話では、熱中症になってから、心療内科に通うようになって、だんだん目つきがおかしくなった、とか。」

　総子は、クビを捻った。

　午前10時。ヘラ放出（はなてん）予備校。

　副校長の新井照代が、一美の相手をしていた。

　ここでも、受講生が熱中症になってから心療内科に通うようになって、凶行に及んだ経緯が話された。

　午前10時。住吉区。新田未来予備校。

　経営者の新田敬吉は、南部にこう話した。

「たまたま、かも知れないんですけど、ヘラさんとこの予備校の土地、一等地なんですよ。元は、市の持ち物で、落札したのがヘラさんだった。悔しがった者が復讐・・・も考えられなくないですよ。」

「ひょっとしたら、ヘラさんに『スポンサー』がいるとか？」

「かも知れないなあ。」

　午前11時。中央区。新井家。

「お邪魔します。」新井照代は、横ヤンこと横山の名刺を見て、「興信所の方なら、警察にお知り合いがいらっしゃるんですよね。」「ええ、まあ。」「あのう、自首するにはどうしたらいいのでしょうか？警察の方が来られた時、自首すれば良かったのかも。」

　午前11時。西区。松里家。

　松里源吾は、杭全第一予備校の副校長をしていた。

　玄関で、花ヤンこと花菱の名刺を見て、「自首と出頭って、どう違うんでしたっけ？」

　午後1時半。会議室。

　アラームが鳴り、皆は集まった。

「進展があったよ。今、東住吉署に予備校連続殺傷事件の合同捜査本部が『立って』いる。被疑者である、放出予備校の里山茂、杭全第一予備校の石破宗佑が確保され手いるんだが、ヘラ予備校グループの放出予備校の副校長の新井照代並びに杭全第一予備校の副校長の松里源吾が出頭してきた。ある日、差出人不明のメールが来た。受講生に受験に悩んでいる者がいたら、心療内科専門の北里クリニックに通わせろ、と。そこで、2人の副校長が、被害者である大西広務と南方貞次から選ばせた受講生に北里クリニックを紹介した。それが、里山茂と石破宗佑だった。それぞれの親の許諾を受けてガサ入れしたところ、クスリが出てきた。科捜研が、こぼれていた成分から最初『抗うつ剤』だった薬が、覚醒剤に入れ替わっていた。」

「じゃ、警視正。覚醒剤のせいで講師を襲ったんですか？」と、総子は尋ねた。

「うん。新種のクスリで、ソタイが追ってた組が扱っていた。そこで、妙なことに、その暴力団瀬戸内山中組と、半グレの「学生援助オーガナイゼーション」との取引がある、と『タレコミ』があった。2人の副校長は、直接関与していないから、情状酌量はあるだろう。芦屋三美総裁が中に入って、下谷姉妹は鉾を納めて『厳重注意』に収めたそうだ。土下座したらしいしなあ。先代からの付き合いらしい、副校長達は。問題の心療内科だが、該当医師がいなかった。しかし、レントゲン技師が行方不明。名前は吉田テツ。時系列で考え直すと、下谷姉妹の予備校奪取をしようと画策していた『学生援助』が、予備校の信用を失墜させる為に受講生に傷害事件を起こさせた。吉田は、半グレの回し者だ。驚いたことに、2つの予備校の地価が、去年の10倍になっているらしい。」

「じゃ、予備校乗っ取りより、土地買収ですか？」二美が発言した。

「両方かもな。とにかく、タレコミの出所は分からないが、EITOの出番だ。時間は午後7時。場所は池田市の別荘地。ヘレン君にプリントして貰ってくれ。既に地図を送ってあるから。」

　小柳警視正が、画面から消えると、小町が姿を現わした。抹茶アイスを食べている。

「ウチ、見なかったことにしよ。」とジュンが言い、「ウチも。」と、ぎんが言った。

　大前が文句を言おうとしたが、「紀ちゃん、抹茶アイス、補充しといて。」と、総子が言った。

　午後7時。池田市。「学生援助オーガナイゼーション」の別荘。

　次々と、瀬戸内山中組のクルマが到着した。

　クルマから降りた組員を「学生援助オーガナイゼーション」の社長以下社員が出迎えた。

「はい、そこまで。」真壁が、ひょいと顔を出して言った。

　いつの間にか、盆踊り等に使われる櫓が立っていた。

　組員達は、反射的にクルマの中の拳銃、機関銃を取り出した。

　真壁に代わって、総子がマイクに向かって、いつもの口上を言った。

「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。悪を倒せと我らを呼ぶ。参上、EITOエンジェルズ！！満を持して。」

「学生援助オーガナイゼーション」の社員は、ナイフガンナイフに似たナイフを取り出し、組員達は、総子達EITOエンジェルズに銃口を向けた。

　そこへ、用賀、二美、弥生、いずみが乗ったホバーバイクが現れた。

　ホバーバイクとは、『宙に浮くバイク』で、民間が開発、EITOが採用して戦闘または運搬に使用している。

　ホバーバイクから、フリーズガン、ウォーターガンの水が組員に浴びせかけられた。

　フリーズガンは文字通り、凍らせる水を噴射し、ウォーターガンは、射出するとグミ状の水に変化する水を噴射する。

　怯んだ敵に一斉に、EITOエンジェルズはバトルロッドとバトルスティックで立ち向かって行った。

　午後8時半。

　長波ホイッスルの連絡を受けた、佐々ヤンこと佐々刑事が率いる警官隊と、捜査四課の猛者達が雪崩込んだ。

　EITOは警察ではないので、逮捕は出来ても、連行取り調べは出来ない。後は警察の仕事だ。長波ホイッスルとは、犬笛に似た形状の、普通の人間には聞こえない音を出す通信機で、主に、待機している警官隊に合図する為に使用される。

　午後11時。南部家のマンション。

「タレコミは、逃げたテツやったみたいやな。関空で捕まったってよ。」

　南部が振り向くと、

「あんた、消火してえ！！」悩ましい衣装で誘う総子に「フリーズガンで？ウォーターガンで？」と言いながら、南部は服を脱いだ。

　総子は、深夜もバトルするのが好きだ。

　冷凍庫には、抹茶アイスが沢山入っていた。

　―完―