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要らぬ心配は直ぐに崩れた。


あの男の着任当日、忘れ物を取りに戻った所で鉢合わせをした。


他の人達は既に会社を出ているのか、課長と二人だ。


「お疲れ、どうしたんだい忘れ物かい?」


この人私の事わかってない?


「はい。忘れ物を取りに…」


いそいそと、デスクの下に置いてあるお弁当箱が入っている袋を手にし、なるべく顔を合わせないように言葉だけをかけ、出て行こうとして、呼び止められた。


「今日は随分つれないね!」


「えっ?」


すぐ目の前に課長が居て、行く手を阻まれている。


「あの…課長?」


「この間と随分態度が違うけど、どうして?会いたくなかったって顔をしてるけど、もう話しかけない方が良いのかな?」


課長から視線を外せず見つめあったまま…

沈黙を破ったのは、私。


「あの、あの時の事は忘れてください。お願いします」


足の爪先が見えるくらい深く頭を下げるが、それを直ぐ様停止させられてしまう。

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