2
男は何をするわけでもなかった。
お風呂から出た脱衣場には、パジャマらしき大きめのTシャツが置かれてある。
一枚着て出て行くと
「髪を乾かしてやる」
椅子に座らされ、男が私の腰までの髪をドライヤーで乾かしていく。
「お前、家出か?」
こくりと頷いた私に携帯を突きつけて
「面倒なのはごめんだからな、電話しておけ」
「嫌だ」
「初めて発した言葉がそれか…まぁいい、けどな、警察沙汰はごめんだ。帰りたくなるまでここに居ればいい」
渋々男の携帯を手に取り家に電話を入れた。
電話に出た母は泣き崩れているようだった。
「何処にいるの?迎えに行くから…帰って来て…」
「大丈夫。そのうち帰る」
携帯は非通知にはしていないはずだ。
「心配してただろ」
こくりと頷けば、今度は向き合う様に座らされ、顔に化粧を施されていった。
最後に口紅をさし…
「まぁまぁだな…」
男は私に
「名前は?」
「サキ」
「今日からおまえはミィだ」
その時から、ここでの名は『ミィ』
本当に猫の様だ。
この人が善人なのか悪人なのか…
前者であってほしい気持ちと、後者の様なドラマ仕立てのスリルも少しばかり望んでしまいそうになったが、今私は生かされているんだと、思う事にした。
ミィ、歳は17。雌。もとは野良などどプレートを首から下げさせられる様な事はなさそうだが…
ご主人様のご機嫌はまだ続いている。
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