※ 拾われたアタシ
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「今日はもう良い、また連絡する」
男はそう言って、腰までの茶髪の毛先がクルクルしている、目鼻立ちがはっきりとしている女に濃厚なキスをし、音をたてて唇を離した。
「ねぇ、アタシしたくなっちゃったのに…」
「今日は帰れよ、今度たっぷりしてやるから」
女は渋々部屋を出て、玄関ですれ違い様に
「あら、また違うの拾ったのね、懲りないわね」
私に、満面の笑みを向けて出ていった。
「おい、上がれ!」
上がれと言われたのは、私。
さっき、この男に拾われたんだ。
家出してきて、ここ二日ばかり路上生活を余儀なくされた。
生きる事に意味を持たない。
何の為に生きるのか…
楽しくも、悲しく、嬉しくもない日常に何も見いだせず、与えられた日々を過ごして来た。
後先考えず、着の身着のまま家を出て、帰る道すらもわからなくなった。
誰かに聞くことすらも出来ずに、このままこうして、生き長らえるのか…
それとも…
十歳は有に離れている男に、公園の滑り台の下で声を掛けられた。
『お前野良なのか?丁度一匹居なくなったからな、家で飼ってやるよ』
見た目は紳士っぽい。
が、発せられた言葉からは、到底そうは思えない。
付いて来る事に、迷いがなかったわけではない。
その時点で、何処かに生き長らえたい気持ちがあったのだろう。
「そのままは部屋が汚れる、風呂入って来い」
浴室に押し込まれる様に連れていかれた。
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