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香さんが、声の主の方を振り返る前の顔を、俺は誰にも言えない。


何であんなに泣きそうな顔をしていたのか…


けれど、香さんが振り向くことはなかった。


「あらやだ!いらっしゃ~いもう!あたしとした事が、あなたが来るのわかってて、もう、こんな所で突っ立ってないで、はやく中へ~」


「うん」


視線を俺にまた向け、軽く会釈をして優希さんと一緒に家の中へと入っていった。


車を停めて来た大河さんが、何も言わずに俺の頭に手を乗せて、にっこりと笑い。


「それはやく片してこい」

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