6話 決別

…彼女は息絶えた、、はずだった


「…魔術、、展、開、、!」


シュイン


「《陽槍》(サンシャインスピア)!」


「え?」


とどめを刺されそうになった時に、気迫に満ちた叫びが聞こえた


「エレン姉!?」


私の目の前には太ももで体を支える姉の姿があった、もうすでに体は機能を失っているはずなのに、魔力を無理矢理身体の生命エネルギーにしてここまで来ている


「さて、うちの娘をこんな怪物にさせたあんたにはお仕置きが必要みたいだな」


「いや今は、」


「だが、」


姉は自分の娘だった怪物に眼差しを向ける


「うちの子供を寝かせるのが先だ!」


「ウオォォォォォォォ!」


ガシッ


怪物は姉を鷲掴みする、姉は自分の愛槍を唯一残っている右腕で掴み、


「お子ちゃまはおねんねの時間だ!いい夢見やがれ!」


「オーバードライブ・グングニル!」


ドガッ!!!!


姉から放たれた一投は怪物の中心を貫き、怪物は叫びながら悶え苦しみ、やがて影が消えていき、もとのマオの姿に戻っていった


ドサッ


「エレン姉!」


私は自分の姉に近寄ろうとしたが、両足が折れていてうまく近づけない、すると、


「マ、マオ、」

「どうした?マオがどうしたんだ!?」

「育て、ろ」

「え?」

「それが、お、お仕置き、だ、」


私はようやく近づけた姉の右手を握ると、


「当然だ!だから、死ぬな!頼むから!」


長いこと死んだ奴らを見た、死には慣れているはずなのに、

くそ姉貴には何故か死ぬという真実を受け入れたくなかった


「おまえが、一番わ、かるだろう?」


「今でさえ無理矢理繋いだ命ってことだろ!だが、そのかわり反動が大きすぎる!」


「…」


「私が今まで見た中で一番最悪の苦痛を伴う死に方だ!」


分かってる分かってるんだ、ただ、私は何度も頭の中で否定を続けた


「…残念だが、じ、時間だ」


刹那、姉が痙攣を始めた、


「あがっ、ぐっ、がぁぁぁぁぁ!」


魔力と生命機関は密接な関係がある、死ぬ時の直前の苦しみは一般的には魔力が多少ならずとも緩和する、


だが、姉は魔力を無理矢理エネルギーにしていたので、その苦痛が緩和されず、そのまま身体を襲う


私は何もできず、ただ悶え苦しむ姉を見るしかなかった


そして、


パァン!


心臓が破裂した、


過度の痛みは神経を異常なレベルまで発達させ、血流を多くし、普通は出血により死亡するはずだった、


だが、良くも悪くも姉の心臓は無傷だった、心臓が血流の早さに耐えられず、破裂したのだ 


「…姉貴ぃ、」


私は姉の返り血を浴びながら、虚な目をした姉を見つめた


前が見えない、涙が自分の視界を邪魔する


いつぶりだろうか、親が殺された日以来か?


「…ネオ、さん」


私は小さくうずくまって寝ているマオに目をやり、決心した


「姉貴のお仕置き、たんと受けたるわ」


そうして、私はマオを抱えて這いながらその場を後にした



第一章 はじまり はじまり 完


予告 7話 出発 


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