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あの家を出て来たけれど、行く当てはない。


行きつけになった飲み屋は、まだ開いているのだろうか…


タクシーをつかまえて、飲み屋までを指示した。


「お客さん外は寒かったでしょ…良かったらこれどうぞ」


渡して来た物を見て、少しだけ暖まった指先。


「ありがと…」


季節は冬から春になろうとしていたが、今日はやけに冷える。


そんな外にジャットだけ羽織ったままでてきてしまったのだから…


ほんの数分で着いた場所はまだ、暖簾がかかっている。


足早に中へ入ると、顔なじみになった一人のおっさんがいた。

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