第66話

「靴も履いてなかったんだよ」



「ハイジ…お前…」



「「「「「お前は喋るな」」」」」



「酷っっ!!!!」




死桜が"よよよ"と泣き崩れるも、無視。




「チビネ…」



「靴も履いてないって、どういう状況……そうか」




蓮が苦しそうに顔を歪め、桂が何かに気付いて押し黙る。




そういえば、竜ちゃんと桂は会いに行ったんだったな。




二人の顔を見れば、どんなものだったか言われずともわかる。




自分至上主義のあの女は、ハイネのことを悪く言いまくったんだろう。




出来るなら、もう2度とアイツにもその母親にも、ハイネを会わせたくはない。




『…ここ…』




ハイネは明々と明かりがついて賑やかな一軒家を指差した。



どこにでもある家。

でもそこからは、楽しげな笑い声が絶えず聞こえてくる。




その笑い声に、一瞬ほんの一瞬ハイネが見せた、泣きそうに歪められた表情に俺は何も言えず。




俺が見てることに気付いたハイネは笑って礼を言ってきた。




さっきの笑顔とは正反対の作り笑顔で。

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