第39話

『芹原 優か』




ゾッとするほどの冷気と殺気のこもった第一声。



ほー。

冷静だな。



アレを捕られて、荒れ狂ってるかと思ったが。




しかし年上を呼び捨てとは、とことん気にくわない餓鬼だ。




コイツが"アレ"を見る目も、呼ぶ声も。



何もかもが不快だ。





「人のことを呼び捨てにする前に自分が名乗れ。常識知らずが」




小馬鹿にした言い方で聞く。



前に会ったときに聞いたような気もするが、お前の名前なんか覚えてもいない。





『テメェに名乗る名前なんざねぇ。今すぐハイネを返せ』



「返せ?何言ってんだ。"アレ"は俺の物だ。お前が勝手に連れていったんだろうが」



『ふざけるな。ハイネは物じゃねえ。俺達の大事なかけがえのない家族だ』




どこまでも曇りなき声の断言に、イライラが増す。



こっちが有利のはずなのに。




「それはお前が思ってるだけだろう?コイツは…」



『オイ』

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