第38話

折れてないほうの手は胸元で、ぎゅぅぅぅぅっと何かを守るように握り締めてる。




きっと、あの笛だろう。



「チッ」




忌々しい。




せめてベッドで寝てくれてれば、楽なのに。




「うう…んっ」




抱き上げ、ベッドに寝かす。




「………や…くも…さん」



"会いたい"




それは、小さく小さく祈るように零れた言葉。




聞こえねえし、お前は俺のだから誰を呼ぼうが関係ない。




しかし、厄介だな。




俺は看病なんてしたことないし。




さっき抱えた体は熱かった。



熱が高い。




脂汗も酷く、ずっと痛みがあるんだろう、表情は苦し気なまま。




気は進まんが、アイツを呼ぶか。




スマホを取りだし、ずっと切ってた電源を入れる。














そのとたん、けたたましく鳴り響く着信音。




知らない、登録されてない番号。




間違いなく、アレからだろう。


あの顔だけは綺麗な生意気な男。




美優か??

アイツからこの番号がバレたんだろうが。



まっ、あの妹がどうなろうと、どうでもいい。




コレが手に入った今。




コレが誰のか、思い知らせてやるよ。




俺は笑って、通話ボタンを押した。

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