第93話

静かな海に、

穏やかな波の音が響く。



この海水浴場も 町起こしのために半ば無理やり作ったような感じで、


砂浜にもゴツい石がごろごろしている。



子供の頃に一度家族で泳ぎに来たけど、


裸足で歩くと結構痛いし 当時カナヅチだったあたしには波も荒く、あまり楽しめなかった気がする。



ここにはそれ以来来ていない。




海水浴にはちょっと早い時期だからか 人はまばらで


サーファーらしい人が数人 ボードを持って通り過ぎる程度だった。




階段の一番下の段に 並んで腰を下ろし、しばらく海を眺めていた。











「・・・あのさ・・・・・・」



しばし続いた沈黙を破ったのはマサト。



『ん?』




「俺さ・・・。



その・・・、上手く言えねぇけど・・・・・・」




うつむき加減にマサトが言葉を続ける。



「俺・・・、いつもお前のこと からかってばっかだけど・・・、



その・・・、



お前限定だからっっ❗」



いつもの鋭いツッコミを飛ばすマサトとは別人のようで


それが何だかかわいいのと、限定って言われたのがくすぐったくて


思わず笑顔になる。



「俺、女と付き合うとかって初めてで・・・、


何かどうしたらいいかわかんねぇけど、



他の奴からかったりとかしねぇし・・・、



その・・・、



一番大事だから・・・‼』

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