第92話

『寝てないっっっ‼』



マサトの背中からおりながらすかさず反論。



「鼻ちょうちん、垂らしてたぜ」


『だから寝てないってば‼』



「超重いし」



『・・・って、人の話聞いてないし‼』



せっかくいい雰囲気だったのに。



マサトといると、結局こうなっちゃう。




ま、ケンカするよりいいけどね。











波の音と潮の香りを全身で感じながら、


マサトと二人、


長い遊歩道をゆっくり歩く。



この辺りは波が荒く、


海岸にはその波で削られてできた岩場が続いている。



この遊歩道の下もそんな感じ。



ていうか、この道も

崖を切り開いて作ったって説がある。




当然、遊泳禁止区域。




それでも 今日の海は穏やかで、きれいな青色をしていた。




カップルや家族連れが

時折脇を追い抜いていく。



ちゃんと恋人同士に見えてるかな? あたし達。



繋いだ手を


もう一度、ぎゅっと握り直す。












「少し休憩すっか」



気がつくと 遊歩道は途切れ、


海水浴場の方へ下りる階段がのびている。




市電のひと駅ぶんくらい歩いた計算になる。



話が途切れることがなくて あまり疲れは感じてなかったけど、



ふくらはぎの辺りがちょっと突っ張る。



『うん。そうしよっか』



マサトに続いて階段を下りた。

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