第94話

マサト・・・。



普段のマサトからは 絶対に出てこないような言葉の連続に、



嬉しいのと同時に

すごくドキドキしてしまう。



『・・・あたしも・・・、




マサトが大事。




一番 大事』



手を握り、

その目を見つめながら言うと、


マサトは照れた様子でそっぽを向いてしまった。



でも、そのかわりとでもいうように、


あたしの体をぎゅっと抱き寄せた。



お日様の匂いのするシャツを通して、


あたしの頬にマサトの体温が、


マサトの鼓動が伝わってくる。




考えてみれば、


あたしがマサトの胸に顔をうずめたのは、



いつも悲しいことや辛いことがあった時。



いじめに苦しんでいた1年生の頃、



あたしはマサトに会うたびに


この胸を借りて泣いた。



そんなあたしを


マサトは戸惑いながらも受け入れてくれた。



今もその胸は温かく、


抱きしめてくれるその腕は力強く


あたしを包んでくれている。




だけど、


あの頃とは全く別の種類の温かさと


なんとも言えない安心感が



今のあたしを満たしていた。








「美奏」




『え・・・・・・?』




マサト・・・?



今、あたしのこと 美奏って呼んだ?

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