第90話

「間接キス」



『え⁉』



マサトの言葉に、あたしはアイスを吹き出しそうになった。




い、いきなり何言い出すんだぁ⁉



みるみるうちに顔が赤くなるのが、自分でわかる。



「何? チューもしたことねぇの?」



あるわけないっつーの⁉⁉⁉



『マサトは・・・あるの・・・?』



マサトはモテるし、あたしと付き合うまでに そんなことがあっても不思議じゃない。



「ねぇよ」



あれ?



意外な答え。



『何それ⁉


自分だってないんなら、チューぐらいとか言わないでよね⁉



超焦るし‼』



強く言いながら、

胸を撫で下ろしている自分がいた。



マサトがモテるのは事実。




それでも やっぱり



他の女の子とつきあってた話を聞くのは嫌。




「んじゃ、間接じゃなくて本物」




『⁉』







声をあげるヒマもないくらい早く、



マサトの唇があたしの頬に触れた。















「お、ここ下りようぜ」



さっきのキスで

まだ真っ赤になってるあたしに気づいているのかいないのか



マサトは何事もなかったように歩みを進める。



入場待ちの行列ができている灯台の入口を素通りして


下の遊歩道へ続く階段を下りる。




駅や街中と違ってあまり整備されていない急な階段。


あたしには一枚の板のように見えるから少し恐い。

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