第88話

「よし、行くぞ」



マサトはそう言うと、先に立って歩き出した。



『あれ? 今日は自転車じゃないの?』



マサトはいつも自転車のイメージだから、


そうじゃないと何だかおかしな感じだ。




「二人乗りは距離的にちょっと厳しいからな。



それに、


お前 すぐ大騒ぎするから、


近かったとしても マジ恥ずかしすぎ」



『マサトが荒っぽい運転するからじゃん』



この間のことを言ってるんだろうか。



だとしたら、騒がれても文句言えるような運転じゃないって、絶対。



「そんな怒るなって」



ぎゅ



『あ・・・』



不意打ち。



突然繋がれたマサトの手に驚きながらも、


嬉しくて


顔の筋肉緩みっぱなし。



歩きだと、

こんないいこともあるね。













『ね、どこ行くの?』



大通りの方まで出て来たけど、


何か当てがあるんだろうか?



「海の方まで行ってみようぜ」



バス停で足を止め、マサトが言った。



『うん❗』



声が弾む。



この潮浜市は 小さな漁師町。



一応、観光地ってことになってるけど


いまいち有名スポットにもなりきれていない


三方を海に囲まれた小さな町だ。



小さな頃から 海は身近な場所。



この辺は市街地だから、浜まではちょっと距離があるけど、



バスか市電で20分も乗れば、観光スポットとして外せない灯台の方まで簡単に出ることができる。

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