第86話

「えぇ~~~~⁉


美奏先輩、彼氏がいるんですかぁ⁉⁉⁉」



後ろからすっとんきょうな声を出したのは小春。



「小春、あんた知らなかったの?」



「はい・・・。


ショックですぅ・・・」



何じゃそりゃ⁉



『おい小春?


そりゃどういう意味じゃい⁉』



「わーーー先輩‼


ごめんなさいごめんなさい‼


暴力反対‼」



『まだ何もしてないっつーの‼』



どんなキャラにされてんだ、あたし。



「でも小春、


今のは失礼だよ。


まるで美奏には彼氏がいちゃいけないみたいじゃん。



そりゃあ美奏は美女って感じじゃないし、


すぐ平手かますし、


ピアノバカだけどさ」



『絵里💧


フォローになってないから』



あたしはため息をつきながら絵里にツッコミを入れた。



「あのっっっ‼


悪い意味じゃなくて、



なんか・・・こう、


お姉ちゃんを取られちゃったような感じなんです・・・。



ごめんなさい・・・」



・・・小春・・・。



しゅんとして謝る小春がかわいかったのと、


お姉ちゃんって言ってくれたのが嬉しくて、思わず笑顔になる。



『いいよ。別に怒ってないから』



「美奏先輩、


大好きですぅっっっ‼」



『うわっ』



小春が勢いよく抱きついてきた。



「小春、心配しなくていいよ。


あんた 美奏の彼氏よりよっぽど美奏に抱きついてるから」



絵里が苦笑しながら言った。




でも、ホントにそう・・・。



絵里は冗談半分に言ったんだろうけど、


シャレになってない。



今、こんなにぎゆっと抱きしめてくれているのが


もしマサトだったら



きっと



もっともっと嬉しいに違いないよね?



小春のあったかさを感じながらも


心はそっちへ行ってしまう自分がいる。




ごめんね、小春・・・。

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