先客

第85話

「はい、


じゃあ今日はこれまで❗



休み明けからは 自由曲の音取りをするからそのつもりで。



お疲れ様でした」



「『ありがとうございました‼』」



音楽室が一気に開放感に包まれる。



明日からいよいよ連休。



みんな休みの予定を話したりして楽しそうだ。



『絵里は? 休み どうするの?』



あたしは


鼻歌を歌いながら帰り支度をしている絵里に尋ねた。



「うちは家族で ばあちゃんのとこへ行くよ」



ガクッ



いつも思うけど、

絵里は見た目と言葉のギャップがすごい。



そのビジュアルで

ばあちゃんって・・・。



『グランマ とかじゃなくて、ばあちゃんなのね・・・💧』



「グランマは ママの方のおばあちゃん。


パパの方は ばあちゃんなの。



ホント、

昔ながらの田舎のばあちゃんって感じ」



『おばあちゃんって どこの人なの?』



「新潟」



『へぇ~‼


じゃあ、大旅行だね。



遠くに行けていいなぁ~』



うちのお父さんは販売業だから、お休みの日はたいていお仕事。



そのせいか、あたしは今まで、

旅行なんてほとんどしたことがない。



おじいちゃんやおばあちゃんは とっくに全滅してるし。



「でもいいじゃん。


代わりに美奏には


ちゃーんとラブラブな予定があるんだから」





絵里の言葉に、

思わず顔の筋肉が緩む。



『やだぁもう❗



絵里のバカバカぁ🎵❤』



絵里の背中をばしばしと叩く。



「っつーか痛いし‼」


『ごめん。つい』



慌てて絵里に謝りながらも顔がにやけてしまう。



「わかったわかった。


こりゃ当分ダメね。

ごちそうさま」



絵里が諦めたように突き放した。

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